■●労災保険
労災保険は強制保険
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●労災保険
労災保険は強制保険

 労災保険は、自動車の自賠責保険とよく似ています。

「車を運転する人」「人を雇う人」

「事故の時の賠償能力がないと被害者が困る」
から
「強制の保険に入らなければならない」

 交通事故も労働災害も、いつなんどき自分が当事者になるかわからない事故で、しかも相手が一生寝たきりになったり亡くなったりと、結果が非常に大変な事になりがちです。そんな重い賠償金をいきなり払えと言われても、払えない人の方が多いでしょう。ないものはどんなにがんばっても払えないので、結局は被害者が泣きを見る事となり、被害者の生活もいきなり立ち行かなくなってしまいます。
 そこでどちらも「車を運転する人」「人を雇う人」は「強制の保険に入らなければならない」と言う事になっているのです。

 労災保険は、労働者のための保険ではなく、事故の賠償金を肩代わりしてくれる、事業主のための保険なのです。
(「働くみんなのために入ったんだよ」と言って聞かせる事もできるので、2度おいしい)
 そして、人を一人でも雇った時には、必ず入らなければなりません。

 この世の中では、何かの損害が出た時には、被害を与えた人が被害を受けた人に、弁償しなければなりません。
 仕事をしていて事故にあった時は、たいがいが安全教育が充分でなかったとか、職場の環境が悪かったとか、苛酷に働かせすぎたとかで、事業主の責任である事が多いです。
 しかし、損害賠償を事業主に請求しようとすると、労働者は裁判で事業主の責任を証明しなければならなくなります。所が、この手の証明は大変難しく、結局は労働者は泣き寝入りになってしまうケースがほとんどになってしまいます。

 そこで、労働基準法では、労働者はとりあえずその責任の証明をしなくてもいいよと、労災事故では責任の所在がどこにあるのかをとりあえずヌキにして、事業主が損害を賠償しなければならないよと、定められています。
 誰の責任なのかを問わない事とした代わりに、賠償しなければならない額は6割に割り引くよ、とも定められています。(もちろん、労働者が裁判を起こして「これは、はっきりと社長の責任だがね」と言う事になれば、残りの4割も払わなければならなくなります)

 しかし、ただ単に法律で「責任はともかくとして賠償しなければならないよ」と決めても、だからと言って保険に入らずに「うちはそんな事ないから」とタカをくくってしまう人の方が大多数なのが、この世の中です。それでは結局被災者が困る事になる、と言う事で、労働者災害補償保険法で、「人を雇う人は強制の保険に入らなければならない」と定められる事となったのです。

 もちろん労災保険とて万能ではありません。
「これは社長の責任でしょ」と言われれば、被災者や遺族の方と示談をしなければならなくなりますし、こじれれば裁判にもなります。労災保険でカバーされない6割を超える部分について払わなければならなくなります。
 誰も不幸にならないためには、事故が起こらないに越した事はありません。人を雇う人はまず第一に、皆がケガなく元気に働ける様に気を配ってあげなければならないのです。



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