- 「うちは労災保険に入っていないから」と言われた。
- 自賠責保険をかけていない自動車には乗ってはいけないのと同じで、労災保険に入っていない人は人を雇ってはいけません。ですから、雇い主は必ず労災保険に入っているはずです。入っていないと堂々と言われたとなると、自賠責保険なしで自動車に乗るのと同じ位その会社がヤバい状況であると思って下さい。
- 「労災保険は社員だけだから」と言われた。
- 自賠責保険に入っている自動車が、どこの誰を轢き殺しても、被害者に保険金が下りるのと同じで、労災保険は雇った人にかけるものではなくて会社そのものにかけるものなので、どこの誰をどんな雇い方しても、その人達が労災を起こせば保険金が下ります。たとえ日雇いでも１回限り１時間ポッキリの臨時バイトでも、自動的に労災保険に入っています。
もし「社員だけ」と言われたとなると、社長が誤解か勘違いしているか、保険料をごまかしているかのどちらかです（保険料＝全員の給料×料率なので、社員分の給料しか報告せずに保険料を浮かせている、とか）。保険料のごまかしがあっても、労災保険に入っている事には違いないので、バイトもパートも労災保険をちゃんと使えます。
ケガをしたのにこの理由を言われて労災保険を使うのをかたくなに拒まれたのなら、保険料のごまかしがバレるのが怖いからなのでしょう。その場合は素直にそのまま労働基準監督署に駆け込んで下さい。
- けがをしたのに、労災保険を使ってくれない。「健康保険で」と言われた。
- 労災保険には、事故らない会社には保険料を安く、よく事故る会社には保険料を高くするしくみがあります。また、事故が多い会社には公共事業の入札の資格がない場合があり、下請けとして使ってくれない場合があります。事故があると労働基準監督署が「安全に問題があるんじゃない？」と視察に来て指導されます。そう言った絡みから、「健康保険を使ってくれ」と言われる場合が往々にあります。
しかし、健康保険は仕事のケガや病気では使えません。労災を健康保険で済ますのは「労災隠し」と言うとても重い犯罪です。健康保険証を持って来られても、病院はケガ人病人を日々たくさん見ているので、一目見ればそれが労災だとわかります。事を荒立てたくないので指摘しないだけです。
ほんの数日病院に通うだけで治るのなら、健康保険の本人負担分の３割負担でも何とか払えるかも知れません。しかし、ケガや病気で調子を崩した人間の体が、どんなこじれ方をするかなんて事は、専門家である医者ですらわからないんです。簡単なケガだと思っていたのに数ヶ月もかかったり、あげくに後遺症が残ったりすると、誰もそのお金を負担できなくなって関係者一同全員が不幸になってしまいます。
会社で「健康保険を使ってくれ」と言われた場合は、素直にそのまま労働基準監督署に駆け込んで下さい。労災保険は、被災者が自分で「使いたい」と言っても構わない事になっているので、労働基準監督署が手続きしてくれます。労働基準監督署が会社を指導し、悪質なら労災隠しとして処罰する事に。労災隠しと決まれば公共事業などは指名停止になります。
- 通勤災害の場合、会社には何の落ち度もないので、保険料が高くなったり労働基準監督署に指導されたり入札で不利になったりとかのペナルティは一切ありません。通勤災害では、はっきり言って気軽に労災保険を使わないと、損です。
- けがをしたのに「労災保険に入っていないから」と言われた。
- あなただけではなく、社長さんも途方に暮れているかも知れませんが、大丈夫です。この場合も労働基準監督署に駆け込んで下さい。被災者の保護が一番大切なので、事故の後なのに事故の前から労災保険に入っていた事にしてくれます。この場合、まじめに保険に入っていた会社と不公平にならない様に、元が取れるまでの間、割り増し保険料を会社が払う事になります。