7.2. 年金制度の概要‐もらう年金
「年金制度の大枠は、こんな感じだ」と言うのを感じていただくために、例外規定の説明はバッサリと切り捨て、基本部分だけを押さえてあります。ですから、本章を読んで皮算用をする事は決してしないで下さい。自分の年金について知りたい場合は、必ず社会保険事務所へ問い合わせて下さい。
年金がカバーしてくれる保険事故
- 老齢年金 歳を取って働けなくなってしまった
- 障害年金 障害を負って働けなくなってしまった
- 遺族年金 死んでしまって働けなくなってしまった
厚生年金には「老齢厚生年金」「障害厚生年金」「遺族厚生年金」が、国民年金には「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」が、それぞれラインナップされています。
老齢年金
老齢基礎年金
65歳になったらもらえます。
- 支給額(年額)
- 満額(794,500円)×国民年金の納付月数÷480月
- 満額…2004年4月からは794,500円。物価水準や賃金水準の変化に応じて毎年変化します。
- 40年間全部もれなく払っていれば、満額がもらえる事になります。
老齢厚生年金
65歳になったらもらえます。
- 支給額(年額)
- 厚生年金加入期間中の月収の平均×料率(0.5481%)×厚生年金の加入月数
- 料率…生年月日によって違います。1946年4月2日以降生まれは0.5481%
- 月収平均…貨幣価値が違う昔の月収は、現在の貨幣価値に換算してから計算します。
- 月収の換算に使う数字は、物価水準や賃金水準の変化に応じ、毎年変化します。
- ボーナスは月割にして、月収平均を計算します。
支給例
厚生年金に加入していた期間の年収平均が360万円で、厚生年金に30年加入していた人は、老齢厚生年金の額は49万円になります。夫婦共に国民年金に未納がなければ、老齢基礎年金(二人分)と老齢厚生年金を合わせると、合計で208万円になります。
- 公的年金は、掛け捨てです。早死にすると保険金はもらえず仕舞いになります。その代わり、いくら長生きしても支給停止になる事は決してありません。
障害年金
障害等級について
どの様な障害が何級になるのかは、法律で細かく厳密に決められているのですが、あえて誤解を恐れずにものすごく大雑把に説明すると、大体次の様な感じになります。
- 1級 一人では生きられない
- 2級 一人では外出出来ない
- 3級 働くことが出来ない
障害基礎年金
65歳になるまでに傷病を負い、2級以上の障害になった時に支給されます。
- 支給額(年額)
-
- 2級=794,500円(老齢基礎年金満額と同額)
- 1級=993,100円(2級の2.5割増)
- 子供の数に応じて家族手当が出ます。一人目と二人目に各228,600円、三人目以上は各76,200円。
障害厚生年金
厚生年金に加入中に傷病を負い、3級以上の障害になった時に支給されます。
- 支給額(年額)
-
- 3級=595,900円(老齢基礎年金満額の3/4)
- 2級=厚生年金加入期間中の月収の平均×料率(0.5481%)×厚生年金の加入月数
- 1級=2級の2.5割増
- 1級と2級は、扶養している配偶者がいると、228,600円の家族手当が出ます。
- 厚生老齢年金と違って、どの年代の人でも料率は同じ0.5481%です。
- 加入月数が25年に満たない人は、25年入っていたものとして計算します。
支給例
年収300万円の人が厚生年金に加入中に事故に遭い、妻が専業主婦、子供が二人いる場合、障害基礎年金と障害厚生年金を合わせた額は、次の様になります。
等級 | 最初に | 一人目が高校卒業後 | 二人目が高校卒業後 |
1級 | 218万円 | 195万円 | 172万円 |
2級 | 188万円 | 165万円 | 142万円 |
3級 | 59万円 | 59万円 | 59万円 |
- 介護を受けながらの生活となると、この額では決して充分ではありませんが、それでもかなりの力強い助けになります。
- ずっと未納していていきなり障害者になると一銭も支給されないので、大変な事になります。
遺族年金
遺族基礎年金
死亡した人の妻が、子育て中なら受給出来ます。
- 支給額(年額)
- 794,500円(老齢基礎年金満額と同額)+子供の数に応じて加算
子の加算=一人目と二人目は各228,600円、三人目以上は各76,200円
- 夫はもらえません。妻であっても子供のいない妻や子育てが終わった妻はもらえません。
遺族厚生年金
次の条件のどれかに当てはまる人が死亡した時に、死亡した人の妻が受給出来ます。
- 厚生年金に加入中
- 障害厚生年金(1〜2級)をもらっている
- 老齢厚生年金をもらう権利を得ている(国民年金を25年払い済み)か、すでにもらい始めている
- 支給額(年額)
- 厚生年金加入期間中の月収の平均×料率(0.5481%)×厚生年金の加入月数×3/4
- 残されたのが夫でも、高齢であれば、もらえる可能性があります。
- 死亡時の条件が(1)か(2)の場合は、加入月数が25年未満の時は、25年入っていたものとして計算します。
- 加入月数を25年にかさ上げした場合は、料率は0.5481%に固定ですが、そうでない場合は生年月日によって料率が変わります。
- 遺族基礎年金のもらえない(子育てが終わったor子供がいない)妻には、40歳〜64歳の間、595,900円(老齢基礎年金満額の3/4)の加算があります。
支給例
年収300万円の人が厚生年金に加入中に死亡し、子供が二人いる場合の妻が受け取る遺族基礎年金と遺族厚生年金の合計は、次の様になります。
最初に | 1人目が高校卒業後 | 2人目が高校卒業後 | 妻が65歳になると |
155万円 | 132万円 | 89万円 | 30万円 |
妻が65歳以上の時は、妻本人の老齢基礎年金も併給されので、もしも老齢基礎年金が満額ならば、妻が受け取る年金の合計は「老齢基礎年金79万円+遺族厚生年金30万円=合計109万円」となります。 |
- 遺族年金の基本的な考え方は「働けるなら自分で働いて稼げ」と言うものなので、働けない人が残された時に年金が支給される様な感じに設計されています。
- 一番多いパターンが、夫婦共に老齢年金をもらい始め、その後、夫に先立たれた妻が夫の遺族厚生年金と自分の老齢基礎年金をもらって生涯を全うすると言うものです。
- 遺族年金は、条件を満たし続ける限りは死ぬまでもらえますが、再婚するともらえなくなります。
- 2007年4月からは、30歳未満で未亡人になった子のない妻には、遺族厚生年金の支給は5年限りとなります。
One Point
全ての場合で、こちらから社会保険事務所に出向いて「年金下さい」と言って手続きをしないと、年金の支給をしてくれません。
免責
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。