■年金講座 年金制度の概要‐払う年金
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

7.1. 年金制度の概要‐払う年金

 年金は大変に複雑で難しい制度です。でも、難しいのは度重なる改革によって生まれた「経過措置(=例外規定)」が山ほどあるからであって、基本的な部分については結構単純な仕組みになっています。
 人によって受ける事になる例外規定が変わって来る上に、その人の人生をも左右しかねない大きな権利についての説明のために、ほとんどの年金解説本は、その例外規定を漏れなく説明しようとしています。しかし、例外規定をきちんと網羅しようとすると、それだけで数百ページの本になってしまいますし、読者の理解をかえって妨げる事にもなってしまいます。
 そこでここでは、「年金制度の大枠は、こんな感じだ」と言うのを感じていただくために、例外規定の説明はバッサリと切り捨て、基本部分を押さえるだけにしておきます。ですから、本章を読んで皮算用をする事は決してしないで下さい。自分の年金について知りたい場合は、必ず社会保険事務所へ問い合わせて下さい。

公的年金は保険です

 日本の公的年金は「保険」として作られていて、積立ではありません。
 厚生年金は正式には「厚生年金保険」と呼びます。国民年金は訳あって「国民年金保険」とは呼ばれていませんが、それでもほぼ100%保険です。

公的年金の種類

 日本の公的年金には3つの制度があります。

厚生年金
会社勤めの人が加入する制度で、社会保険庁が運営
共済年金
公務員や学校の先生が加入する制度で、各地方や各職域の共済組合が運営
国民年金
日本に住む20歳以上60歳未満の人全員(国籍を問わない)が加入する制度で、社会保険庁が運営

 厚生年金と共済年金は、ほとんど同じ仕組みになっています。共済年金に入っている人は、共済組合が説明も手続も手取り足取り面倒見てくれるので、何の心配もいりません。(以後、共済年金の説明は割愛します)

 厚生年金は会社員が、国民年金は国民全員が加入すると言う事なので、会社員の人は同時に厚生年金と国民年金の両方に加入する事となります。

国民年金の被保険者の種別

 種別によって国民年金とのかかわり方が全く違って来るので、自分がどの種別になるのかをしっかりと確認しておいて下さい。

第2号被保険者
厚生年金にも入っている人
第3号被保険者
第2号被保険者に扶養されている配偶者(妻に限らず、夫でも構いません)
第1号被保険者
第2号被保険者でも第3号被保険者でもない人

届出

厚生年金

 会社が全部やってくれます。

国民年金

 日本に住んでいて20歳になると、自動的に加入になります。しかし、社会保険庁は、どこに誰がいるのか、その人が第何号被保険者になるのかが把握出来ないので、届出が必要です。
 第2号被保険者と第3号被保険者については、会社が行ってくれる厚生年金の届出と連動しているので、意識する必要はありませんが、第1号被保険者については市町村役場へ行って届出しなければなりません。

保険料

厚生年金

 給料×料率 で計算され、給料から天引きされます。半額が会社負担となるので、天引きされるのは半額になります。
(料率…2005年9月〜2006年8月は14.288%)

国民年金

第1号被保険者
月々定額の保険料を自分で払いに行きます。
(保険料…2005年4月〜2006年3月は13,580円)
第2号被保険者
厚生年金の保険料の中に含まれています。
第3号被保険者
厚生年金制度が負担してくれているので、自分で払う必要はありません。

国民年金の任意加入

 国民年金に適用外の人でも、次の人は国民年金に加入する事が出来ます。

  • 海外に住む日本人は、国民年金に任意加入出来ます。
  • 保険料の納付月数が足りなくて老齢年金が満額にならない人は、65歳になるまで国民年金に任意加入出来ます。
  • 保険料の納付月数が足りなくて老齢年金がもらえない人は、年金がもらえる納付月数になるまで国民年金に任意加入出来ます。
    たとえ年金がもらえる納付月数に届いていなくても、70歳になると任意加入は打ち切りになります。
    1965年4月2日以後生まれの人は、この65歳〜69歳の任意加入は(今の所は)出来ません。

国民年金の保険料免除

 国民年金は条件が揃えば自動的に加入(強制加入)なのですが、生活苦で支払が困難な人のために、保険料の免除制度があります。

  • 学生の人は、申請すれば保険料を免除してもらえます。
  • 生活保護を受けている人などは、市町村役場の判断で、保険料が免除になります。
  • 市町村役場に申請して、認めてもらえれば、保険料を免除してもらえます(結構ハードルが高いです)。
    全額免除と半額免除の2コースあります。2006年7月からは1/4免除と3/4免除コースが加わります。

 免除で保険料を払わなかった分だけ、老齢年金の額が減りますが、免除の期間は未納扱いにはなりません。
 10年以内であれば、免除で払わなかった分の保険料を払う事が出来ます。

未納だとどうなる?

厚生年金

 会社が保険料を滞納しても、それは本人の責任ではないので、未納扱いにはなりません。

国民年金

 納付期限から2年を過ぎると、払いたくても受け取ってもらえなくなります。
 未納が多い人は、保険金を受け取れません。国民年金ばかりか厚生年金も連動してもらえなくなります。

老齢年金
納付月数が合計25年にならない人は、年金をもらう事が出来ません(例外規定がいろいろあります)。
障害年金と遺族年金
未納な月数が3分の1以上ある人は、年金をもらう事が出来ません(原則)。
2015年度までは、未納が多くても、過去1年間に未納がなければ年金が出ると言う例外規定があります。死んだり怪我したりした日の前日の時点での納付状況で判断するので、過去の未納が多い人は、くれぐれも滞納しない様に気をつけて下さい。
One Point

 国民年金の未納が多いと、厚生年金も巻き添え食らってもらえなく場合があると言う点に注意して下さい。保険料免除の認定を受ける事が出来れば、その期間は未納扱いにならないと言う点もミソです。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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