■年金講座 あとがきに換えて
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

8.1. あとがきに換えて 年金は本当に破綻するの?

「年金とはそもそも一体何なのだ?」「どうして年金制度が存在しているのか?」と言った根本的な部分から、今、日本の年金制度が抱えている問題点まで、これからの年金を考えるために必要な知識を、この本では網羅して来ました。
 これでもうあなたは、いっぱしの年金を語れる人になっているはずです。
 そこでもう一度、この質問してみたいと思います。

 あなたはどんな老後を迎えたいですか?

「将来、こんな日本になっていたらいいのに」「人生の締めくくりが、こんなだったらいいのに」そんな事に思いを巡らせてみて下さい(難しい理屈は抜きにして、直感でいいです)。そして、そんな将来に向かって行くには、今の日本には何が足りないのかを考えてみて下さい。
 そして、この話題で、周囲の人々をどんどん巻き込んで、話の輪をどんどん広げて行って下さい。

 今後、日本の年金制度をどうするかについては、色々な選択肢があると思います。
 もちろん、今の年金制度をどうにかして維持し続けるのも、選択肢のひとつでしょう。しかし「年金だけで老後が暮らせる様に」と言う事にとらわれる必要はないと思います。
 例えば生活費の半分程度の年金で、残り半分は子供達からの仕送りで暮らすのが当たり前な社会だってアリかも知れません。国民の総意が「年金はもう御破算にしよう」と言う事であれば、それはそれでアリでしょう。年金ではない、何か別の制度を作って老人達の生活をみるのもひとつでしょう。死ぬ直前まで働ける様に健康が保てて雇用が確保される社会になるのも、ひとつのあり方です。
 どんな将来になるにせよ、モデルケースから漏れてしまった人達を救う手だてさえしっかりしていれば、国民の生活は落ち着くべき形に落ち着いてしまうので、そんなに心配はないと思います。

 所で「年金の基本について知ってもらってから、読者の皆さんに自分で判断してもらおう」と言う編集方針から、タイトルに反して年金が破綻するのかどうかと言う点については、これまであえて触れて来ませんでした。しかし、中には「それでは反則だろ」と思う方もいるかも知れません。
 そこで最後に、私が考える所の破綻の可能性について綴っておきます。

 私は、年金が破綻する事は決してないだろうと考えています。制度として成熟し、老人達は生活費として年金を当てにする様になっています。そんな中で「もうダメです、払えません」なんて事になったら、その時あなたはどう思いますか?
 国民全員が怒り出しますよね。そうなると、クーデターが起きます。
 国がひっくり返る事態は政府も絶対に避けるはずですから、年金が当てに出来なくなる事態は、絶対に避けるはずでしょう。たとえ年金と言う形でなくなるとしても、老後を暮らすための何らかの制度が作られて、引き継がれるはずです。
 だから「今の日本国がある限りは、年金が破綻する事は決してないだろう」と思うのです。

 しかし一方で、今の日本国がなくなっちゃう可能性は、少なからずある様な気がします。
 年金に限らず、今の国の財政は目茶苦茶です。このまま借金は増え続け、国自身が破綻してしまうかも知れません。
 そうなると、政変が起こるかも知れません。起こらなくても、日本国の経済は壊滅するでしょう。
「年金は当てに出来ないから」と、他の金融商品でせっせと老後の備えをしていたとしても、国が破産してしまえばあらゆる金融商品が駄目になってしまいます。それでは、年金を払っていた場合と結果は同じです。
 公的年金は、老齢年金だけではなく、障害年金や遺族年金もワンセットになっています。しかも保障は一生涯。これだけの内容の保険なのに、保険料は格安です。掛け捨てで貯蓄性がないのでピンと来ないかも知れませんが、大量の税金が投入されている分だけ、民間には決してマネの出来ない最強の金融商品になっているのです。
 だから、年金を捨てて他の金融商品に走るのはいかがなものかと、私は思います。

One Point

 破綻論者には、真剣に考えた結果「破綻しそうだ」と言う結論に至った人も中にはいますが、ただ単に保険料を払いたくないがために「破綻したらいいな」(「だから払わなかった自分は賢かったんだ」と後で言える様になったらいいな)と思っているだけの人が多いみたいです。保険料を払わない事によって抱え込むリスクは、とても大きなものです。「自己責任」と言う言葉の重みをきちんと噛みしめてから、慎重に判断をして下さい。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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