■年金講座 国民年金の税法式化
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

6.4. 国民年金の税法式化

 現在、国民年金も厚生年金も、あくまでも保険であると言う考え方から、保険料方式を採用しています。月々保険料を払ってもらい、その納付に応じて保険金(年金)を支給しようと言うものです。
 保険料方式では、保険料を払わない時の不利益がはっきりしています。そのため、強制的な取り立てが難しいと言う欠点を持っています。法律上はどんどん取り立てを行ってよい事になっていますが、国民年金に関してはこれまでほとんど全く取り立てが行われていませんでした。
 社会保険庁ではこれを改めるべく、悪質な例(所得がとても多いのに未納している人)に対しては取り立てをする様に方針転換をしましたが、私達庶民が取り立ての対象になる事はおそらく当面ないでしょう。

 取り立てがないのをいい事に、保険料の未納を決め込む人がとても増えています。今や第1号被保険者(厚生年金加入者やその人に扶養されている妻以外の人…自分で国民年金保険料を払わなければならない人)のうちの1/3もの人が、保険料を未納しています。
 また、所得が少なくて保険料免除の認定を受けている人も、第1号被保険者のうちの1/6にもなります。この人達は正式に認められて正当に保険料を払っていないのですが、それでも、将来受け取る事になる年金の額はそれ相応に減らされてしまう事になります。

 第1号被保険者のうち、1/2(=1/3+1/6)もの人が、保険料を払っていない事になります。(第2号被保険者や第3号被保険者を含めた、国民年金制度全体で見ると、15%程度なので、財政への直撃にはなっていない)
 これらの人達は、老後に無年金者になってしまったり、わずかな年金で我慢しなければならなくなってしまいます。このまま何の策も講じなければ、いずれは「老後の生活が出来ない人」が大量に発生するとんでもない事態になってしまいます。

 実に半数の人達が保険料を払っていないなんて、もはや制度として成り立っていないと言ってもいいのではないでしょうか?

 そこで出て来るのが「100%税方式にして、保険料方式なんかやめてしまえ」と言う考え方です。

 100%税方式にすれば、保険料免除を受けていたために年金が1/3になってしまって老後に首が回らなくなる人も、若い頃に未納を決め込んで歳取ってから青くなる人も、一掃する事が出来ます。事実上、国民年金からは空洞化問題は消滅する事になります。
 税金はそれ相応に高くなるでしょう。多分、消費税が大幅UPされる事になります。反面、月々払っていた国民年金保険料はなくなりますし、厚生年金制度から国民年金に渡っていたお金もなくなるので、厚生年金保険料も下がります。税金UPと保険料DOWNが相殺され、おそらく負担はそれほど変わらないでしょう。困るのは、今まで払っていなかった人達だけです。

 かなり現実的な改革案で、実際にこの改革が行われる可能性は高いと思います。
 しかし、厚生労働省はこの改革案をかたくなに拒否をしています。
 理由は、受益者負担の考え方が消えてしまうので、国民自らが年金制度を支えているんだと言う意識がなくなってしまい、制度がなし崩しになる、と言うものです。確かに将来、年金の財源が足りないからと言って際限のない増税が繰り返される事態に陥ってしまう可能性がない訳ではありません。
 しかしそんな事よりも、ひょっとしたら「自分達のお仕事が減ってしまう」とか「保険料方式を上手くコントロール出来なかった自分達の非を認める事になる」と言う事の方が問題だと、厚生労働省は思っているのかも知れません。

One Point

 将来、国民年金が税法式に移行する時が来たとしても、これまでの未納分に応じて年金を減らされる仕組みになるはずです。「払わなかった方が正解だった」と言う事にはならないでしょう。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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