日本の年金制度を運用しているのは社会保険庁です。
この社会保険庁は厚生労働省の下部組織です。実際に年金制度を運用する役割のみを背負っていて、制度を改正したり再計算したり予算を取ってきたりと言った機能は、全て上の厚生労働省が受け持っています。
社会保険庁には、ひとつの社会保険事務センターと、各都道府県に社会保険事務局と呼ばれる下部組織があります。県社会保険事務局の下には社会保険事務所があり、その社会保険事務所が実際に私達に対して、届出を受け付けたり保険料を集めたりしています。

社会保険事務所はサービスが悪いのではないかと、よく言われています。また、社会保険庁は不正が多くてけしからんと言う事も、よく耳にします。
全員が、社会保険庁と言う組織に所属している職員のはずなのですが、実は、はっきりと3種類の人達に別れています。そして、それぞれの間で意志の疎通が出来ていません。現在、社会保険庁や社会保険事務所が抱えている問題の大部分は、この3種類の人達の間に行き来がない事が原因となっているのです。
社会保険庁には、社会保険庁の職員として採用された国家公務員がいます。全員がノンキャリアです。その人達の上司は、社会保険庁に出向して来ている厚生労働省採用のキャリアな国家公務員になります。社会保険庁に長く勤務するノンキャリア組の人達は、そのうちに社会保険庁から去るであろうキャリア組の人達とは交流をしません。下から上がって来た貴重な情報は、そこで止まってしまって厚生労働省には伝わりません。上からの指示に対しても、改良案などを打ち上げる事はありません。
腰かけvs生え抜き、エリートvs一般職員と言った見事な二重構造になってしまっているため、同じ職場で働いているにもかかわらず、風通しが極めて悪い状態になってしまっているのです。これではどうしても、責任感を育む事は出来ずに不正の温床になってしまいます。
一方、県社会保険事務局と、その下の社会保険事務所ですが、こちらはもっと事情が複雑です。
実は、県社会保険事務局は2000年に出来たばかりの新しい組織です。それまではこの部分には、代わりに県庁が入っていました。つまり、社会保険庁からの指示を県庁が受け、県庁の下部組織の社会保険事務所に伝えていたのです。社会保険事務所に勤務する人達は、県からの指示で働いていたものの、身分は国家公務員でした。しかしそれは、地方採用された国家公務員です。勤務先は県庁の下の社会保険事務所なので、県単位での採用になっていました。
国の仕事をいつまでも地方に押し付けておくのはよくないと言う事で、2000年に改革が行われ、社会保険事務所は県庁から切り離され、国の直轄となりました。それまで県庁がやっていた仕事は、県社会保険事務局と言う新しい役所を作って引き継ぎました。
しかし、社会保険事務所に働いている職員は、国家公務員であっても県単位で採用された人に違いありません。現在でも、県境をまたいでの交流が全くないので、手続きひとつ取っても、県によってルールが違うなんて事が山ほどあります。人の行き来がないために、職員がやたら余っている県と全然足りない県とが隣接していたりもします。
また、地方採用の国家公務員であるために、社会保険庁にいる中央採用の国家公務員との間には、かなりの温度差があり、やはり交流がありません。
社会保険庁は、厚生労働省が作った商品(年金)を、厚生労働省が作った指示書(法律)の通りに、粛々と事務処理を進めるだけだし、社会保険事務所は、社会保険庁が送って来た指示書(通達など)に従って、粛々と事務処理を進めるだけです。お互いに「ここがおかしい」「これはこうした方が」と思っても、それを報告したり打ち上げたりしようと言う発想が全くありません。
こんな、お互いに行き来の全くない組織では「みんなでひとつの商品を扱っているんだぞ」「もっと商品をより良くして行こう」と言う意識が生まれる訳がなく、サービスもよくなるはずがありません。
この所の社会保険庁バッシングで、さすがにこのままではまずいだろうと言う事で、社会保険庁は自らの手で社会保険庁革をする決心をしました。色々と片づけなければならない問題があるのですが、その中でもこの三層構造が諸悪の根源だと言う事はちゃんと理解している様で、まずはこれらの職員達が交流するための場(意見交換会や勉強会)を積極的に設ける事を考えている様です。
社会人が年金相談出来る様に、夜間や休日に社会保険事務所を開ける様になりました。年金ポイントのお知らせ通知も2008年から始まります。いずれは、老齢年金の支給開始について、まず最初に国民が社会保険事務所に出向いて手続をしなければならない現状を改めて、社会保険庁の方から「まもなく年金の支給が始まります」と通知出来る様にしたいと考えている様です。
お手並み拝見と行きましょう。
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。