■年金講座 少子化‐豊かさと子育て
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

5.5.3. 少子化‐豊かさと子育て

 日本は戦後復興と高度成長を経て、ずいぶんと豊かな国になりました。生きるのにとにかく必死だった時代は過去のものとなり、生活にゆとりが生じる様になりました。
 ゆとりが出来た分だけ、生き方の選択肢はぐっと広がり、価値観もとてもバラエティに富んだものになりました。
 一家の働き手を確保するために、せっせと子供を作って家族を増やさなければならない必要性も、今はもうありません。
 結婚するのが当たり前とか、結婚したら子を持つのが当たり前とか、そんな事を言われる事もなくなり、自分達がどう生きてどう暮らすかを自由に選べる様になったのです。

 価値観が多様化したとは言え、世帯を持つと言う事は家庭に対して責任を背負うと言う事には違いはなく、子供を育てると言う事は多大な手間とコストがかかる事には変わりはありません。そこで、現在の生活レベルを落とさないために、あえて結婚しない・子を持たないと言う選択肢を選ぶ人が多くなりました。その方が束縛がない分だけ自分らしく生きられると言うのです。その様な生き方をしていても世間に受け入れてもらえる様になって来たのです。

 統計調査を行ったりアンケートを取ったりすると、結婚するしない・子を持つ持たないのは本人の自由であって、強制すべき事ではない、と言う意見で埋まります。皆さんもその意見には異論はないと思います。
 しかし、そう思っている一方で、身近にいるおひとり様やパラサイトシングルにはうざったさを感じていませんか? 親族や友人の新婚さんを見て「子供はまだなの?」と口に出そうになり、その言葉を飲み込んでいませんか?
 世間一般の話としては「どう生きるのも各人の自由」と言う価値観は認められる様になって来ている反面、身近な話となるとそうは行かない…どうもこの辺の価値観には、立て前と本音が存在する様なのです。

 自由な生き方を選べると言う価値観を持って生きて来たのに、いざ思い切って結婚してしまうと、必ず周囲からは子供を望まれてしまう。結婚後には子供を持たないと言う選択肢は許されず、無理にその選択肢を選ぼうものなら周囲の非難を浴びてしまう。結婚をすると大きな選択肢をひとつ失う事になり、その事が結婚のハードルを上げてしまい、結婚にちゅうちょしてしまう原因になっていないでしょうか。

 恋愛は自由でよいと言う価値観もすっかり定着し、結婚するなら恋愛結婚、無理して見合いする位なら独身のままでもよいと言う価値観が広がっています。
 しかし、いざ結婚を考える段になると、本当にこの人で大丈夫だろうかと慎重になり、何人も値踏みしているうちに婚期を逃してしまう人が多いです。逆に、自分が値踏みされると仮定して考えた時に、まだまだ自分は結婚に適さないと判断しているうちに婚期を逃してしまう人も多いです。

 生き方は自由だと言っても、いざ自分や親族の事となると、まだまだ世間体に縛られていると言う事なのでしょう。生活が豊かになった分だけ、昔よりも強く世間体を気にする様になり、結婚のハードルがとても高いものになってしまったのではないでしょうか。
 価値観の多様化はまだまだ過渡期であって、本当の意味での自由にはまだ至っていないのではないかと思います。

 統計調査では、理想とする子供の数と実際の子供の数とにズレがあると言う結果が出ています。望むだけの人数の子供を持とうとしない理由を問うと、圧倒的に「お金が足りない」と言う答えが返って来ます。
 実際の所「子育てにはこれだけのお金がかかる」と言う話が広がっていて、その金額を耳にすると思わずたじろいてしまいます。しかし、子育てにかかるお金は、収入が高ければそれなりに青天井で、収入が低ければそれなりの育て方があるものです。進学させるお金が工面できなければ、勤労学生として苦学させてもいいはずなのに、そう言う発想はないのです。
 また、家が狭いので二人目は無理だと言う人も多いです。親子三人が川の字になって寝ると言う発想はあっても、大勢で目刺しシシャモになって雑魚寝すると言う発想がありません。その上、子供には個室を与えるのが当たり前だと言う先入観もあります。

 生活に豊かになった分だけ、譲れない一線も高くなってしまい、それを割り込む様な生活レベルは考えられないと言う事なのでしょう。そう言う生活は受け入れられないと言う豊かさの感覚を身につける様になったのに、実際の豊かさは追いついて来ていない〜日本の豊かさはまだまだ発展途上だと言う事になるのでしょう。

 欧米先進国と比べると、日本の経済成長はとても急激なものでした。あまりにも急に豊かになったものだから、社会状況がそれに追いつき切れていないのです。日本の後に続き、やがて追いつこうとしている東アジア諸国も、日本以上の急激な成長のために、一気に少子化におちいったのではないかと言われています。

One Point

 明治以前の日本は離婚するのは簡単で、離婚率は今よりもずっと高いものでした。やり直しが簡単と言う事から、結婚のハードルもとても低いものでした。かえって今よりも結婚が自由で気軽なものだったのかも知れません。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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