公的年金は、基本的には掛け捨てです。民間の年金保険の多くは「10年保証」などと言って、たとえ早死にしたとしても保証された分の保険金は確実にもらえる様に出来ているのに対し、公的年金の場合は死亡した時点で年金給付は打ち切られてしまい、早死にすれば保険料の元を取る事が出来なくなります。年金を一銭ももらう事なく死んでしまう人も多いです。
言い換えると、公的年金は「早死にした人から長生きしてしまった人に対して、仕送りをしている」と言う事が出来ます。早死にしてしまった人がもらいはぐったお金は、長生きしてしまった人達の給付へと回されているのです。
公的年金は、純粋に「万が一、長生きしてしまった時のための保険」であって、貯蓄性はありません。その分、生保の終身年金よりも保険料が格安になっているのです。
しかし、誰もかれもが長生きする様になってしまうと、この前提が崩れてしまいます。
2003年現在、日本人の平均寿命は男子78歳、女子85歳(65歳の平均余命が男子18年、女子23年)で、年々確実に延びています。
いずれは90歳の大台に乗る時が来るだろうと、多くの人が予想しています。
年金啓蒙派は、だからこそ老齢リスクをカバーする保険である年金が大切なんだと説いています。逆に、年金破綻論者も、そこまで平均寿命が延びてしまえば年金制度は危ないと説いています。
厚生労働省も、2050年には平均寿命が男子80歳、女子89歳になっているだろうと仮定して、平成16年の財政再計算を行いました。
実際の所、その様な超長寿社会になるのでしょうか?
そもそも、どうして今の日本人はこんなにも長寿なのでしょう?
私は、日本の平均寿命は今ぐらいがピークであって、やがてほどなく減少に転じるだろうと思います。
大病をした時、大怪我をした時、遭難した時など、生死をさまよう事となった場合に、同じ条件でも持ちこたえる人と亡くなってしまう人に別れます。どれだけ丈夫な内蔵セットを持っているかで、どれだけ極限状態に耐えられるかが違って来るのです。
人間は大体、思春期を迎える頃〜14歳頃までには身体の基本が出来上がります。それまでの環境次第で、どの様な内蔵セットに仕上がるかが決まってしまいます。
戦前生まれの今のお年寄りは、大変質素な、それでいて栄養のバランスに優れた食事を口にして幼少期を過ごし、大変打たれ強い身体を持つに至りました。ですから、大病をしてもなかなか死にません。戦後の食うに困らない豊かさの中で従来からの食生活を変える事なく健康に歳を取り、高度な医療のおかげでぐんぐん寿命を延ばし、今では100歳のカクシャクなジジババがTVに普通に出て来るまでになりました。
私達は、100歳まで生きる事は出来るでしょうか?
内蔵が元々ひ弱なだけならともかく、日ごろの運動不足と好き放題な食事のおかげで、血は甘くてドロドロになり、常に身体のどこかが調子が悪く、生活習慣病をひとつひとつ拾いながら老いて行かなければなりません。今のお年寄りみたいに70歳や80歳でビシバシ働くなんて、とんでもないでしょう。
もしかしたら医療の発達のおかげで長生き出来るかも知れませんが、それは、布団とお友達になる生活を意味します。病院代がかさんでしまい、年金だけではとても足りないでしょう。何も出来ない状態で生き永らえるのは本人にとっても苦痛だし、医療費は青天井で現役世代の首をどんどん絞めて行きます。儲かるのは医者ばかりで、本人にとっても国の経済にとっても、いい事が何もありません。
医療費に関しては現に高齢化が大問題になっていて、健康保険の財政はすでに待ったなしの危機的状況にあります。
高齢化を考える時には、年金について考えるだけでは不充分で、健康保険や介護保険なども含めて、社会保障全体としてどうあるべきかを考える必要があります。
かつて長野県は「早死にの県」と呼ばれていました。その汚名を晴らすべく、とある医者が予防医療と健康教育を啓蒙する活動を始めました。その活動はやがて、地域住民や他の医療機関を巻き込み、全県的な活動に広がって行き、今では長野県は日本一の長寿県となりました。(医者が儲からない仕組みを、医者が作ったと言う事です)
「ピンピンコロリ」が長野県民の合言葉となり、老人はいつまでも元気で、死ぬ直前まで現役で畑に出たりするので、国民年金の年40〜50万円だけでも悠々とした生活になる人がとても多いそうです。
老後に同じ年金生活を送るのであれば、布団とお友達になるのではなく、健康を保って生活の質を維持し、死ぬ時は長患いせずにコロっと死ぬ方がいいでしょう。
現在の長野県の状態を全国に広げようとすれば、きっと医者達の非常に強い抵抗に遭うでしょう。しかし「『病気を治す医療』ではなくて『病気にさせない医療』を」「『最高の医療』ではなくて『最良の医療』を」と言う考え方がそろそろ出て来てもいいのではないかと思います。
西洋は肉食文化ですが、付け合わせを工夫して野菜をたくさん口にする習慣があります。しかし日本では、その付け合わせの工夫の習慣だけがすっぽり抜け落ちた状態で食の西洋化が進んでしまいました。
主食(ごはん・めん類)、主菜(肉・魚類)、副菜(野菜類)を3対1対2の比率で採るのが理想的な食事と言われています。皆さんも今一度、自分の食生活を点検してみましょう。
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。