現在の日本の年金は、大きくふたつに分けられます。厚生年金と国民年金です。(共済年金は厚生年金の亜流になります)
厚生年金は雇われる人の年金として、国民年金は自営業の人の年金として作られました。
国民年金は、制度設立当初は、厚生年金と同じ位の手厚い給付を行う事を目的としていました。しかし、一度破綻を経験してしまったため、昭和61年改革で、国民年金の給付は大幅にカットされる事となりました。
そのため現在では、満額の国民年金でも夫婦合わせて月々13万円程度にしかならず、かなり節約をしなければ暮らして行けません。一方、厚生年金に加入していた人は、夫婦合わせれば月々23万円程度になり、その程度の年金であれば取りあえず住む所と食べる物には困りません。
厚生労働省の言う所の理屈は、こうです。
国民年金に加入している人達は自営業者で、現役引退の時期を自分で決める事が出来ます。国民年金の給付が心もとないのであれば、その分高齢になるまで働いて、先々の生活資金を作る事も可能です。
一方、厚生年金に加入している人達は、会社の都合で、ある年齢に達したら退職しなければなりません。退職してしまうと、収入の道を断たれてしまいます。だから、厚生年金の給付は手厚くなくてはなりません。
つまりは、会社員は立場が弱いので保護されるべきで、自営業者は保護の必要がない、と言う事です。
しかし現実には、厚生年金は金持ちの入るもの、国民年金は貧乏人の入るものになってしまっています。
法人の会社なら例外なく、個人経営でも5人以上の会社なら、厚生年金に加入しなければなりません。しかし、規模が小さくてギリギリの経営をしている会社になると、厚生年金に加入していない場合が多いのです。
また、厚生年金に加入している会社では、週30時間以上で1年以上勤め続ける予定の人なら、厚生年金に加入させなければなりません。しかし現実には、厚生年金対策のためにパートを週28時間で雇ったり、アルバイトは「1年以上いるかどうかわからない」と言う理由で厚生年金に加入させない会社が多いです。
厚生年金に加入出来なかった人達は、国民年金に入る事になります。老後資金を蓄えるための財力もない上に「自営業のための年金だから、安くていいのだ」と言われると、もう泣くしかありません。勤めた会社次第で、勤め方次第で、老後の生活までもが、はっきりと差が出てしまうのです。
厚生労働省が年金を設計するに当たって想定しているモデルでは、次の通りです。
このモデルの通りなら、いくつもの年金制度を渡り歩く事にはならないはずです。
しかし現実には、この様な平たんな人生を送るのはごくごく少数の恵まれた人だけです。普通の人なら何回か転職を経験し、そのたびに加入する年金制度が変化して行きます。
特に女性の場合は、就職→結婚→退職→パートで再就職と、そのたびに年金上の身分が変化します。これに離婚や再婚が加わったり、再就職の形態が色々あったりすると、その人の年金の加入記録はものすごい事になってしまいます。
各年金制度に格差があり、しかも、その制度を行ったり来たりする様になると、最終的には自分の年金給付がいくらになるのかが予測出来なくなってしまいます。それでは老後の生活設計を立てる事が出来ません。ひいてはそれが、年金不信へとつながってしまうのです。
たとえ今の稼ぎが少なくとも、国民年金だけでは老後はやって行けないから、今の生活を切り詰めて「国民年金を倍払いたい」とか「自分で厚生年金に入りたい」と思っても、国はそれを認めてくれません。
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。