■年金講座 世代間の不公平‐若者の場合
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

5.2.3. 世代間の不公平‐若者の場合

「今どきの若者は」と言う言葉がよく使われます。しかしこの言葉は、いつの時代でもよく使われるので、今どきの若者が昔の若者よりも劣っているとは私には思えません。今どきの若者も、あと10年か20年かすれば時代の主役となり、その人達の気質が当たり前のものとなる日が必ず来ます。

 その今どきの若者達は、会社に就職すれば「厚生年金に入りたくない」と言って社長を困らせ、国民年金に至っては実に半数の人が未納を決め込んでいます。
 そんな彼らは決まって「年金は元が取れない」と口にします。
 しかし年金は保険なので、損得を考える事自体がナンセンスです。保険とは、相互扶助をするためのシステムのはずです。
 個人主義が行く所まで行ってしまった結果、助け合い精神に欠く世代が出現してしまったのではないかと思います。また、小中学校で修身や道徳の時間が減らされて行った弊害なのかも知れません。

 また、若者達は、目の前のお金は取りあえず全部使ってしまい、将来のために取っておくと言う事をしません。
 若者が将来の事をあまり考えないのは、今も昔も変わりないはずなのですが、昔と違って今は、そんな若者をいさめる大人がいなくなってしまいました。

 核家族化が進んで、老人が身近にいなくなったのも、よくありません。そんな状況では、自分の老後をイメージ出来るはずがありません。

 こんな環境で育ってしまったのでは、今どきの若者が「年金の保険料=無駄な出費」と考えてしまうのも、無理はないでしょう。

 しかし、今どきの若者が年金に批判的なのは、これだけではない様です。

「就職するのもとても難しく、自由に使えるお金も少ない。そんな苦労をしながら生活しているのに、先の世代はバブルで美味しい思いをした上に、自分達の何倍ものリターンで年金がもらえる。どうしてそんな人達のために保険料が払えるか」
「自分達が享楽的な生活を好む世代になったのも、そう言う風に自分達を育てた先の世代が悪い」
 私は、若者達にそんな事を言われた事があります。

 バブルがはじけてから十数年が経ちました。今の20代の人達は、景気がいい状態を体験した事がないのです。
 今どきの若者が、それほどまでに心が堅くなってしまっていて、未来に希望を見い出せなくなっているんだと言う事を、年配の人達は理解し、常に意識する様にして下さい。その上で、身近な若者と積極的に語り合う様にして、彼らに「生き方」を教えてあげて下さい。(年金の話題も「生き方」のテーマのひとつですね)

 若者たちには、そのあなた達の気持ちは単なるひがみ根性でしかないと言う事を自覚してもらえたらと思います。
 社会に対する無力感は、大人になる過程で必ず通る道です。今の時代が特別だと言う事はありません。やがて必ず、自分達が主役の時代がやって来ます。
 また、バブルよりも前には、日本は今よりもはるかに過酷な時代が長く続いた事を知って下さい。先人達の努力の結果、今の豊かな日本があり、超不景気なのに餓死する人がほとんどいない「世界的に見ても不思議な国」に自分達は住んでいるんだと言う事を、自覚していただければと思います。

One Point

 ひょっとして、年金不信の話題を、単なる「保険料を払いたくない」と言う気持ちを正当化する口実に使っていませんか? そこの所を、もう一度点検してみて下さい。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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