■年金講座 世代間の不公平‐老人の場合
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

5.2.2. 世代間の不公平‐老人の場合

 現行の厚生年金制度が始まった1954年、保険料率は3%でした。
 国民年金も、1961年のスタート時は保険料は100円でした(この頃の月給の平均は2万円位)。

 現在では、厚生年金は18.3%を目指して、国民年金も16,900円を目指して値上げを続けています。保険料の格差は実に6倍〜10倍にもなっています。
 それでいて、支給の方は徐々に減らされる段取りになっているし、支給開始年齢もどんどん遅くなっています。
 今、年金をもらっている人達は、少ない負担で多くの年金をもらっている事となり、これでは現役世代からは不満が出るのも仕方がないでしょう。

 しかし、不満を言うのはちょっと待って下さい。
 当時の3%や100円の負担は、現在の3%や1,500円の負担とは違うのだと言う事を、ちょっと考えてみて下さい。

 高度成長前の日本は、総じて皆が貧乏でした。安い給料からは食費をひねり出すのがやっとで(エンゲル係数がとても高かった)、そんな厳しい家計の中から年金の保険料を負担していました。
 その後、日本はどんどんと成長して行き、物価も年々高くなりましたが、物価の上昇以上に賃金がどんどん上昇して行きました。今では、数年に一度の頻度で車を買い替えたり、一人ひとりが無線電話を持つ事が出来る様な、生活のゆとりが生まれました。
 当時の民衆と現在の我々とでは、保険料の負担に耐える能力に違いがあると言う事なのです。

 また、年金制度が始まったばかりの頃の老人達は、年金がないか、あってもわずかしかもらっていませんでした。そんな状態だったので、当時の現役の人達は、親を養いながら自分の保険料を払っていたのです。
 今は、年金だけでも充分暮らせる人が多くなり、必死な思いで親に仕送りしている人もあまり見かけなくなりました。

 現在の老人達は負担に対して年金をもらい過ぎなのかどうか…これを考える時には、保険料の負担能力がとても低かった事と、親と自分の二重の負担をしていた事を割り引いて考えなければなりません。

 ただし、それらの事情を割り引いて考えたとしても、当時の3%が今の18.3%と釣り合いが取れるのかと言うと、はなはだ疑問です。また、これから先の世代は給付も削られて行きます。ですから「厳しい時代に保険料を納めて来たので、たくさんもらえるのは当然」と考えている老人達には、今の年金額はやはり大盤振る舞いなのであって、後の世代にとんでもないつけを回してしまった結果なのだと言う事を、きちんと自覚して欲しいのです。そして、謙虚な気持ちで年金を受け取っていただければと思います。

One Point

 年金を大盤振る舞いしてしまったのはお役人ではなくて政治家です。やはり、選挙に積極的に参加して声を届けている人達の意見が通りやすいと言う事なのでしょう。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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