私達が月々稼いだお金のうち、十数%が年金の保険料として国に取り上げられてしまいます。その分、私達は自由に使えるお金が減ってしまう事となり、年金の保険料の分だけ日々の経済活動が小さくなってしまいます。
全国の国民から集められた保険料は相当な額になります。そのために、年金制度は日本の経済に大きな影響を与える存在になっているはずです。
では、実際にその影響力がどの程度のものなのか、見てみましょう。
まず最初に、日本国の経済規模を表す基本の数字として、GDPを確認しておきましょう。
GDPとは「国内総生産」の略語で、この数字は、私達国民が1年間働いた結果として沸いて出て来たお金(働いた事によって生じた付加価値)(国民全員の稼ぎの合計額)を表しています。
で、現在の日本のGDPは、500兆円になります。
…額がでかすぎて、ピンと来ませんか?
でしたら、この額を日本の人口で割ってみましょう。1億分の1にしてみると、500万円になります。この程度の金額なら「その位の年収の人も、周囲に何人かいるなぁ」と思いますよね。
今後、「兆円」と言う文字が出て来た時には「万円」に読み替えると、これらの金額を家計に例えて考える事が出来る様になります。
蛇足ですが、参考までに国家予算の数字も挙げておきます。収入は税収45兆円+新たな借金36兆円で、支出は65兆円+借金の返済17兆円になります。
国の借金は、すでに700兆円を越えてしまっています。
私達国民が払っている年金の保険料は、合計で26兆円になります。国庫負担として国民年金に支出されている税金を含めると、合計で32兆円になります。
私達が稼いだ500兆円のうち、32兆円…6%ものお金が「自由に使えないお金」となってしまうので、当然、その分だけ消費が減り、景気にマイナスの作用をします。
一方、こうして集められたお金のうち、29兆円がお年寄りに配られています。
大半のお年寄りにとっては年金は唯一の現金収入なので、そっくりそのまま生活費として消費される事となり、貯蓄に回る事はありません。その分、景気にプラスの作用をします。
もしも、小額な年金でもリッチに暮らせるからと言って海外移住されたり、また、年金が余って仕方ないからと言って海外旅行三昧されたりすると、その分だけ私達が払った保険料が日本経済にかかわらなくなり、景気にマイナスの作用をしてしまう事になります。(もしもその様な老人が身近にいる様でしたら、説教して下さい)
社会保険庁が持っている積立金(厚生年金+国民年金)は144兆円になります。(共済組合が持っている積立金(共済年金)も合わせると、全部で194兆円)
この社会保険庁が持っている144兆円と言うお金が、日本では郵便貯金に次ぐ大きなまとまったお金になります。
この積立金、金庫に寝かせておいても、給付の足しにはならないので、当然ですが運用して増やそうとしています。
あまりにも巨額な資金の持ち主が市場に参加しているため、社会保険庁の一挙手一投足が投資家達を戦々恐々とさせてしまっています。
一方で、その資金があまりにも巨大すぎるので、もし万が一社会保険庁が積立金の運用をやめてしまうと、日本の株価は一気に暴落してしまうとも言われています。昨今の日本の株安を、年金の資金が底支えしてくれていたとも言われています。
これだけのまとまった資金が市場を介して日本経済に流れ込んでいる事になるので、年金の積立金の存在は景気に大きなプラスの作用をしている事になります。
注)使用した数字は2000年〜2003年のものですが、アバウトです。桁の感覚だけ感じて下さい。
現役世代と比べると老人達の購買力はかなり強く、日本の景気にとって強い追い風となっているのは確かでしょう。
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。