公的年金は保険として運用されているので、損得勘定をする事自体が筋違いなのですが、それでも皆さんの関心が「損か得か」である事には違いはないでしょう。
そこで、月々の保険料に対して、どれだけのリターンが返って来るのかを計算してみる事にします。
まずは国民年金から計算してみます。
国民年金は厚生年金と比べて、保険料も年金額も計算式が単純で、わかりやすいです。
高度成長期に大盤振る舞いをしてしまったツケとして、現在も国民年金の保険料は年々値上げが続いています。
平成16年改革では、国民年金保険料は2017年までに「16,900円×賃金変動率」まで値上げし、それ以後は値上げを止めて賃金変動分の増減にとどめる事が決められました。
今回の計算では、とりあえず「16,900円/月額」の数字を使う事にします。
国民年金の老齢年金(老齢基礎年金)は、次の計算式で求められます。
満額×支払月数÷480月
20歳から60歳になるまでの40年間(480月)に国民年金保険料を全て支払った人は、満額の年金がもらえ、未納の月がある人は、その分だけ割引になる仕組みになっています。
満額の金額は、2005年度では794,500円で、この金額は毎年、賃金変動に応じて自動的に変化しています。
平成16年改革では、厚生年金の方で「所得代替率が現在60%なのを、50%に切り下げる」事が決まり、その切り下げの仕組みが厚生年金の計算式に組み込まれたのですが、国民年金の方でも、そのとばっちりを受けて、同じ仕組みを使って切り下げを行う事が決まってしまいました。ですから、将来の満額は今の満額の5/6になってしまう勘定になります。
そこで今回の計算では、満額の金額に「662,100円/年額」(=794,500円×5/6)の数字を使う事にします。
毎月16,900円ずつ保険料を払うと、年金は年額で1,379円ずつ増えて行く事になります。
65歳で年金をもらい始めてから、保険料の元が取れるまでの月数は、次の通りとなります。
16,900円÷1,379円=12年3か月
77歳と3か月になるまで頑張って生きれば、得をする計算になります。
65歳の平均余命(65歳の人が平均であと何年生きるのか)は、男性18.0年・女性23.0年です。(2003年簡易生命表)
仮にこの平均まで生きたとすると、男性なら1.47倍、女性なら1.88倍になって保険料が返って来る計算になります。
金利を計算してみると、男性は1.26%、女性は1.80%です。
この数字、いかがでしょうか? 思っていたより多いですか? 少ないですか?
もっとも、平成16年改革の前の金額を使って同じ計算すると、男性で2.26倍(2.46%)、女性で2.88倍(2.92%)になるので、今回はかなり大胆に切り下げが行われた事になります。
今後の少子高齢化の進み具合によっては、今回以上の大胆な切り下げが行われないとも限りません。しかし反面、国民年金に対する税金の補助が、現在の1/3から1/2に引き上げられる事が決まっているので、財政的に楽になり、これ以上の切り下げを行う必要がないかも知れません。
30年後や40年後の日本がどうなっているのかがわからない以上、どの様な計算をしても「取らぬタヌキの皮算用」にしかなりません。しかし、現在わかっている数字を組み合わせて計算すると、こんな感じになるんだと言う感覚だけは、とらえておいて下さい。
毎月保険料を払うたびに「1,379円増えた」と唱えましょう。
今の所はまだ、元本割れする様なひどい事態は考えられないので「人並みに生きるのであれば、損はしない」と言う事が出来るでしょう。
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。