■年金講座 厚生年金の破綻と復活
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

3.7. 厚生年金の破綻と復活

 1942年に完全積立方式でスタートした厚生年金は、たった3年で敗戦と言う大ピンチを迎える事になりました。

 積立金は確保されていて、年金制度自体は無事だったのですが、いかんせん日本国自体が破産状態になってしまいました。
 敗戦と共に物価がものすごい勢いで上がり始めたのですが、当時の厚生年金は物価の変動を全く考慮しない設計になっていたので、せっかく大枚はたいて払った過去の保険料が、どんどん無価値になって行く事態となってしまいまいた。
 国も、そんな厚生年金に対して何らかの改革をしなければならないと理解していたのですが、戦後のゴタゴタに厚生年金よりも大切な事が山積みだったので、厚生年金改革についてはモラトリアムを決め込む事となりました。

 しかしこの間、保険料は集め続けました。ただ、国民の生活も大変に苦しいので、本来なら9.4%の料率でなければならない所を、特例として3%に引き下げる事となり、その分不足する事になる積立金については後で考える事にしました。

 そんなこんなで、事実上機能しなくなってしまった厚生年金だったのですが、幸いな事に制度創設から3年しか経っていないので、養老年金の受給者がまだ皆無だった上に、過去のしがらみがない分、自由に制度の再設計が出来る状態だったので、モラトリアムしてしまっても特に不都合がなかったのです。
 遺族年金についてはすでに受給者がいて、年金額も雀の涙だったのですが、その人達には寡婦・遺児年金(現在の遺族年金と同じもの)を新設して救済しました。

 そうやって戦後混乱期をやり過ごしていた厚生年金ですが、やがて養老年金の受給者が出現し始めます。さすがにそうなると、ほったらかしにしておく訳には行かず、1954年に全面改革を行う事になりました。

 保険料の料率は、計算上は5%必要だったのですが、3%に据え置く事にし、年々料率を上げて行き、遅れを取り戻す設計になりました。(段階保険料方式)

 給付の方は、それまでは保険料の積立に見合った額(報酬比例部分)だけが支給されていたものを、定額の年金(定額部分)を上乗せする事にして、現在の二階建て年金の姿が誕生しました。定額部分を上乗せする事により、支給額は保険料の総額とは完全には比例しなり、それまで純粋な保険だった年金に所得再分配機能が加わる事となりました。

 この新制の厚生年金が現在まで続く事となり、現在私達がお世話になっている厚生年金となります。

One Point

 遅れを取り戻すための保険料の値上げは現在も続いていて、毎年料率が上がっているのは、皆さんもご存知の通りです。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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