■年金講座 厚生年金設立の本当の目的
サイト目次を飛ばして本文へ



年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

3.6. 厚生年金設立の本当の目的

 1942年に政府が労働者年金(=厚生年金)の制度を作った目的は、表向きは労働者の福祉のためと言う事になっていました。しかし実は、ふたつの隠れた目的がありました。

 ひとつは、インフレ対策のための制度だったと言う事です。

 強制保険に加入させて保険料を徴収する事によって、労働者の自由になるお金を少なくし、社会に出て行くお金の量を減らす事によってインフレにブレーキをかけようと言うもくろみが、年金制度には隠れていました。
 当時、女性は若い頃に少し働きに出るのが普通で、長く勤め続ける人は大変稀でした。加入年数が足りなくて養老年金など到底もらえそうにない女性にまで対象を拡大したのは、この効果を狙ってのものです。

 そしてもうひとつは、政府は戦費が欲しかったと言う事です。

 当時日本は、泥沼化して行く一方の日中戦争に手を焼いていました。そして、1941年暮れにはアメリカ相手に戦争を始めてしまいました。ちょうど、いくらお金があっても足りない時代のまっただ中だったのです。
 この当時、国は軍票を発行したり郵便貯金を奨励したり、あらゆる手段を使って戦費を集めていました。厚生年金も、そう言った戦費集めの一環として作られた制度だったのです。
 完全積立方式と言う事は、積立金が貯まって最低加入年数をクリアする人が出て来るまでは、養老年金を払わなくてもいいと言う事になります。その間、支出が全然ない訳ですから、政府は積立金を使いたい放題になります。
 もちろん、戦争にお金を使う事自体は悪い事ではなく、ある意味正しい投資のあり方です。戦争に勝って相手から賠償金を取れば、投資した戦費は何倍にもなって返って来ます。そうすれば、大盤振る舞いで年金の支給が出来る様になります。

 しかし皆さんがご存知の通り、日本は壮絶な負け方をしてしまいました。そのため、取らぬタヌキの皮算用は、音を立てて崩れ去る事となってしまったのです。

One Point

 日本の年金制度は、スタート時にはすでにヨコシマな制度だったと言う事になります。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



吉田社会保険労務士事務所 (c) NYAN@chimaki-tei 2001/2015
お問い合わせ先