■年金講座 資本主義と核家族と年金
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

3.3. 資本主義と核家族と年金

 家内制手工業では、家庭内の全員が持てる能力を持ち寄って労働をしていました。能力の劣る者でも、それなりに労働に参加していました。

 しかし、イギリスで産業革命が起こると、社会の姿が一変してしまいます。
 人々は、資本家と労働者に別れました。
 大量の資本を集めて、工場を作り、大型機械を揃えて、大量の人手を集めて、大量生産が行われます。そんな工場で働いた労働者は、そこで得た給料で大量生産された製品を購入します。そうして得られた売上は、さらに新たな投資に回されます。
 そうやって勢いよく経済を循環させて、社会全体の生活の底上げをして行こうと言う資本主義の時代がやって来ました。

 資本主義では、何よりも効率が優先されます。

 せっかく大量の資本をかき集めた作った設備なので、最大限に有効活用しなければ損失が出てしまいます。そのため労働者は、会社での労働に持てる能力の全てを集中させなければなりません。家庭の仕事をしている余裕がありません。
 男手は家庭の事を気にせずに会社での労働に専念し、妻は夫が仕事に集中出来る様に家の管理と子育てとを一手に引き受ける、そんな役割分担をしなければならなくなりました。

 これが、核家族の誕生です。

 そうなると、邪魔になるのが、働く能力が劣って来ている老人達です。
 労働能力が半人前になってしまった老人達は、そのまま会社に所属していると会社の足を引っ張ってしまいます。ですから現役をリタイアしてもらわなければなりません。だからと言ってそんな老人達が家庭に入ると、今度は家計の足を引っ張ってしまいます。
 つまり老人達は、自分の面倒を自分で見なければならなくなったのです。

 それまで社会は家中心・地域中心で回っていましたが、資本主義になると、会社中心の社会へと変化して行きました。
 それに伴って、それまでは家庭や地域が抱え込んでいた老齢リスクを、個人で背負わなければならなくなりました。

 そのため「現役のうちに、将来の自分に仕送りをする」と言う年金のシステムが誕生したのです。

 核家族は、資本主義を支えるための欠く事の出来ないシステムのひとつです。そして、その核家族システムを支えるためには、年金制度が不可欠なのです。

One Point

 資本主義社会では、半人前の労働力と言うのは認められません。働くなら100%でなければならないのです。

免責

 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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