日本の年金制度が保険システムを利用して構築されていると言う事が理解出来る様になると、さまざまな事が見えて来ます。
皆さんの年金に関する話を聞いていると、どうしても関心が「元が取れるのかどうか」に集中しがちです。
しかし、年金は保険なのです、積立ではありません。
保険は、加入早々に保険事故に遭えば、わずかしか保険料を払っていなくても、ばく大な保険金を手にする事になります。逆に、いつまでも保険事故がないと、保険金はもらえず終いです。
生命保険の多くが貯蓄性を歌い文句にしているために勘違いしがちなのですが、本来は「予想外に保険事故が少なかった」「予想以上に運用益が出てしまった」と言う理由で、余った保険料を返す(掛け捨てにはしない)サービスが、いつしか変形して貯蓄性を持ってしまったに過ぎません。現在では客引きのために貯蓄性を前面に出すべく、余分に保険料を取る様になってしまっています。保険料が積もって貯蓄代わりになると言うのは、本来の保険の姿ではないのです。
ズバリ「お金を出して安心を買う」、これがが保険なんですね。
年金の場合、特に老齢年金は、よっぽどの事がない限りほとんどの人が受け取る事が出来ます。
しかし公的年金は基本的に掛け捨てで貯蓄性がないので、元を取る前に早死にしても差額は出ません。最悪の場合、年金がもらえる年齢になる前に死んでしまうと、一銭ももらえないのです。(民間の年金保険だと「10年保証」等と称して、保証された分の差額が支払われます)
逆に、公的年金では、どれだけ長生きしても死ぬまで年金をもらい続ける事が出来ます。(民間の年金保険にも終身年金な商品がありますが、保険料がかなり割高です)
早死にすると損をする/長生きしても大丈夫、と言う事は、言い換えると「早死にした人が、長生きしている人に仕送りをしてあげる」と言う事になります。これがまさに、一人で抱え込むはずだった老齢リスクを大勢に分散すると言う考え方で、ここには個人単位の損得勘定が入り込む余地がありません。掛け捨てにする事によって、格安な保険料にする事が出来ます。
そして、年金は福祉ではなくて保険なので、保険料を払っていない人には保険金が出ません。
「自動車保険の保険料を払い忘れていたために、事故があってから途方に暮れる」と言う話をよく耳にしますが、これと同じ様に、年金の世界でも保険料の未納に対しては冷酷です。
「老後の事なんか今から考えないよ」と言って保険料を納めていなかった人が、ある日突然障害者になってしまい、年金が支給されずに途方に暮れるケースがとても多く、社会問題にもなっています。
注)過去の全期間のうち未納が1/3未満の人や、過去1年間に未納がゼロの人は、未納があっても救済されます。過去の未納が多い人はくれぐれも滞納しない様に注意して下さい。
得られる補償と、払う保険料を天秤にかけると、公的年金は末恐ろしいほどの掛け得な保険になります。
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。