年金での保険事故は「障害・死亡・老齢などで働けなくなった」と言うものです。
でも、障害や死亡は事故だと言うのはわかるのですが、老齢が保険事故になると言う事については、大半の人が疑問に思うでしょう。だって、普通の健康状態の人が普通に暮らしていれば、誰だって老齢になるのですから。
ではここで、皆さんに次の問いに答えてもらいます。
あなたの老後の生活に必要な資金を、見積もって下さい
自分の事として具体的に考えてみましょう。もしも年金がなかったと仮定して、または、年金を一切払わないと決心したとして、考えてみて下さい。
あなたは、老後資金のために、いくら積み立てればいいのでしょうか?
この計算に必要な数字は、次のふたつです。
月々の生活費は、人それぞれの生活レベルで変化します。5万円もあれば充分と言う人もいれば、30万円でも足りないと言う人もいるでしょう。でも、いざ老後を迎える段になり、その時までに貯まった額から月々使える額を逆算し、その額に合わせた生活レベルにする事も可能でしょう。
では、何歳で死ぬのかと言う事は、どうやって見積もればいいのでしょうか? 仮の数字として、平均寿命で計算すればいいのでしょうか? それとも「何歳まで生きたい」と言う希望の年齢を設定すればいいのでしょうか?
例えば、90歳まで生きるつもりで、65歳からの25年分を考え、3,000万円の貯蓄に成功したとします。そして、計画通りに月々10万円で生活して行ったとします。
計画通りに90歳で死ぬのであれば、何の問題もありません。しかし、何事もなく90歳になってしまった場合、いざその時になって「90歳まで生きる計画だったから、そろそろ死のうか」なんて事を、あなたは考えますか?
もしも100歳まで生きてしまったら、いくら節約したってお金が足りません。せっかく立てた計画が、元からひっくり返ってしまいます。(もちろん、80歳で死んだら、そんな心配はありません…貯金を残して死んじゃうから「元気なうちにもっと使っておけばよかった」と後悔しますが)
長生きをすると言う事は、とてつもなく大きなリスクなのです。
「その人は何歳で死ぬのか」と言う事があらかじめわからないので、老齢は必ずリスクになります。そして、その人の寿命は、地獄に行って閻魔帳を見せてもらう以外には、知る方法がありません。
保険とは、一人のリスクを大勢で抱え込む事によって、各人のリスクを低くするためのツールです。万が一、不幸にも長生きしちゃった人がいたら、長生き出来なかった人達がその人のリスクを負担して助けてあげる…それが保険としての年金の姿なのです。
よく「自分は早死にするから大丈夫だ」と言う人がいますが、そんな人に限って長生きしてしまい、ドツボにハマっています。
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。