■年金講座 コラム・年金手帳
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

コラム・年金手帳

 年金手帳は20歳になったら市町村役場から送られて来ます。20歳になる前に会社に就職した人は、その時に会社経由で手帳をもらいます。ですから年金手帳は、成人している人なら必ず持っているはずなのです。
 しかし、失くしてしまっている人が非常に多いのです。失くしたままだと、会社に就職する時に事務のお姉さんを困らせてしまいますし、お役所での年金の手続にも困ります。将来の年金の受け取りの時にトラブルに見舞われる可能性もあります。
 ですから、今一度、自分の年金手帳がどこにあるのか、確かめておきましょう。


 「年金手帳は会社が保管している」と言う人も結構います。法律では「手続が済んだら、年金手帳はすみやかに本人に返しなさい」となっているので、会社が年金手帳を預かるのは法律違反とも言えます。
 年金手帳が会社にあると、まるで年金手帳を人質に取られているみたいで、実際嫌なもんですよね。
 でも、ほとんどの会社が年金手帳を預かっているのには、理由があるんです。
 その理由とは「若い人は、年金手帳をすぐになくしちゃうから」
 年金手帳をなくさない様にと言う「親心」で、会社は年金手帳を預かってくれているのです。


 あなたの年金手帳の表紙は、何色をしているでしょうか?「そんなの、青に決まってるじゃん」と言うあなたは、とりあえず安心して下さい。
 オレンジ色の手帳をお持ちの方は、年金手帳を開いてみて下さい。
 オレンジ色の手帳は、まだ国民年金と厚生年金とで別々の番号を使っていた頃の手帳です。ひとりの人に年金番号がいくつもある事が原因で長い間混乱が続いていたので、平成9年に「ひとり一番号」になる様に制度改革されました。その時につけられたのが統一番号の「基礎年金番号」で、新制度になってからの手帳は青色をしています。(青色の手帳に書かれている番号は、必ず「基礎年金番号」です)
 オレンジ色の手帳を持っている人には、平成8年の暮れに「基礎年金番号通知書」なるものが郵送されました。その「基礎年金番号通知書」があれば、とりあえずオレンジ色の手帳でも、どの番号が「基礎年金番号」なのかがわかる様になっているのですが、その「基礎年金番号通知書」を失くしてしまっている人が非常に多いんです。
 幸いにも「基礎年金番号通知書」を見つける事が出来た人は、失くしてしまわないために、その「基礎年金番号通知書」を年金手帳に「糊で貼りつけて」しまって下さい。


 年金手帳を複数持っている人は、全部一ヶ所に集めてみて下さい。そして、それらの手帳に書かれている年金番号を書き出してみて下さい。
 青い年金手帳に書かれている番号や基礎年金番号通知書に書かれている番号が、あなたの基礎年金番号です。いくつかある年金番号のうちのひとつに「基礎年金番号」とか「基礎番確定」みたいな意味のゴム印が押してあったら、その番号があなたの基礎年金番号として採用されています。
 20代後半の人になると、年金番号が2つ以上あるのが普通ですが、それらの年金番号のうち、どれが基礎年金番号なのかはっきりしていればとりあえずセーフです。
 どの番号が基礎年金番号に採用されたのかはっきりしない人や、基礎年金番号がいくつもある人は、放っておくと後々必ずトラブルになるので、社会保険事務所へ行って基礎年金番号を決めてもらって下さい。


 いくつか年金番号のある人は、どの番号が基礎年金番号に採用されたのかを確かめるだけでは不充分です。採用されなかった番号が基礎年金番号に組み入れられているのかも確認しなければなりません。
 年金手帳に書かれている年金番号のうち、基礎年金番号になれなかった番号の横に「基礎年金番号に登録済」みたいな意味のゴム印が押してあれば大丈夫です。その様な文字が見当たらない場合は、その年金番号の加入記録があなたの基礎年金番号にきちんと連動しているのか、それともどこの誰の加入記録なのかわからない「宙に浮いた状態」になっているのか、どちらかはっきりしません。
 もしも、宙に浮いた状態になっていたとしたら、後々トラブルになる可能性があるので、社会保険事務所へ行って基礎年金番号にまとめてもらって下さい。


 どうして基礎年金番号の制度を作ったのかと言うと、国民みんなの加入記録がとっ散らかってしまって収拾つかなくなってしまったからなのです。
 かつての国民年金と厚生年金は別々の独立した制度だったので、別の番号が付けられていたのは仕方ないのですが、国民年金なら国民年金で、厚生年金なら厚生年金で、ひとりにつき番号はひとつであるはずでした。「これがあなたの番号ですよ」と言う事を紙に書いて渡して、大切に保存しておいてもらうため、年金手帳と言うものを作りました。
 でも、就職するたびに「年金手帳? そんなものは知らん」と言っては新しい手帳(と番号)をもらって、結局番号が10も20もある人が現われたり…普通の人でも複数の番号を持っているケースは珍しくありません。「ひとり1番号」の原則が崩れているので(しかも手帳を失くしていたりで)、老人になって年金をもらう段になって、番号を手掛かりに加入記録を追いかけるのが難しくなってしまっているのです。
 それを何とかしようとして「基礎年金番号」を決めて「ひとり1番号」が徹底出来る様にしました。基礎年金番号制度が出来てから、まだ7年しか経っていないので、まだまだ過渡期です。ですから、皆さんもこれを期に自分の基礎年金番号がきちんとはっきりしているのか、今一度確かめておいて下さい。


 同じ年金番号の記録であれば、同一人物だと言う事は推定できます。でも「ひとり1番号」が徹底できていなかったがために、年金をもらう手続の書類には、自分の全ての加入歴について書き出さなければなりません。それを手掛かりに社会保険事務所の人はコンピュータからその人の年金番号を芋づる式に引っ張り出して、加入記録をはっきりさせて、手続を進めます。
 老人になって年金をもらう段になって、一生分の履歴書みたいなものを、手続の書類に書かなければなりません。そのために、年金手帳には加入記録についてメモするためのページがついています。
 このページ、白紙のままの人が非常に多いのですが、「お役人以外の人が書いたら怒られる」と言うほどのものでもないので、これを期に「いつ、どこの会社に勤めていたか」「国民年金に入っていた時は、どこの市町村で払っていたか」を年金手帳に書いてしまって下さい。


「ドラゴンズが2回目の優勝をした時、名古屋で鍛冶屋をやってた覚えがある」と言われ、コンピュータでそれらしき加入記録が出て来れば、社会保険事務所の人はその加入記録は本人の物だと推定するしかありません。もしかしたら本当は他人の物かも知れません。しかし、数十年前の事などはっきり覚えている人もいないので、確認を厳密にすると誰も年金がもらえなくなるので、これは仕方がないのです。
 ですから、例えば「昭和○年△月×日生まれのスズキイチローさんの加入記録は『売り切れ』です」なんて事態が起こっていたりもします。
 また、社会保険庁にあるデータベースには、年金番号や加入記録の他には、名前の読みと生年月日と性別だけが記録されています。例えば手続の書類を書いた人が名前を読み間違えたり、誕生日を間違えていたら、記録上は別人になってしまいます。昭和30年代に社会保険庁が紙の記録をデータベース化した時にも、書類の文字が達筆すぎて別人がたくさん誕生してしまったらしいです。
 年金の手続の書類で、もしも正確に加入歴が書けるのであれば、それだけきちんと加入記録を追いかけてもらえる様になります。記憶が正確であれば、たとえ「売り切れ」でも文句を言いやすいです。
 だからこそ、年金手帳の加入記録ページが重要なのです。たとえ「電話工事・所沢・S63頃〜H2春頃」と言う大ざっぱな書き方でも充分手掛かりになります。でも、正確であればあるほど手掛かりは確かなものになります。思い出せる限り詳しく、加入記録を年金手帳に書き出して下さい。


 年金手帳がないと言う人も困りものですが、年金手帳を複数持っている人も注意が必要です。
 全ての年金手帳に書いてある全ての年金番号が、基礎年金番号に登録されているのかをきちんとチェックしなければならないし、両方の手帳にそれぞれ基礎年金番号があったりもします。
 どちらか片方の手帳を失くしてしまって、2冊持っていた事も忘れてしまうと、その失くした手帳の年金番号も自分のものだったと言う事まで忘れてしまう事になります。
 手帳が複数あると、何かとトラブルの元なので、そんな人は、社会保険事務所へ行って、複数の手帳を1冊にまとめてもらう手続きをしましょう。
 ただし、1冊にまとめてもらっても、他のを捨ててしまうのはちょっと待って下さい。
 その捨てようとしている手帳にも、加入歴などの記録が色々書かれています。それを新しい手帳に転記してからでないと、後でその加入歴を思い出せなくなってしまいます。
 管理が手間でないのなら、いらなくなった手帳も保存しておいた方がいいかも知れません(表紙に「移行済」とか書いて、区別出来る様にしましょう)
 持っている手帳以外にも、手帳があった様な気がする人は、その失くしてしまった手帳での加入記録が宙に浮いて誰の物かわからなくなっている可能性があります。そんな人は、社会保険事務所へ行って、加入記録を確認してもらって下さい。


 年金手帳は社会保険事務所へ行けばいくらでも再発行してもらえる物です。運転免許証の様に再発行回数が記録される事もありません。そう言った意味では、亡くしてもとがめられる事もなく、さほど大切なものではないイメージがあります。年金手帳ではお金は借りられませんし、年金手帳を人質に取られても別に苦にはなりません。でも、年金手帳はとても大切なものなのです。
 年金手帳の担う役割はふたつです。
 ひとつは、その人の年金を手続するための番号が書かれていると言う事です。旧制度で複数の番号を持っていた人に関しては、今現在通用する番号(基礎年金番号)がどれかと言う事が示されています。
 もうひとつは、その人の加入歴が書かれていると言う事です。履歴書を書くのにも、若い頃は苦もなく書けるものですが、だんだん歳を取って来ると、職歴を思い出すだけでも大変な作業になって行きます。それと同様で、年金をもらう手続の時に、20年も40年も前の事を思い出すのはとても難儀な事です。その時に、きちんと記録が書かれている手帳があると、どんなにか助かる事でしょう。
 ですから、年金手帳はくれぐれも大切にして、決して失くさないで下さい。

免責

 このページは2004年7月〜2005年2月に配信したメルマガを再構成したものです。時間の経過とともに、文中の数字にはズレが生じており、また、制度や世情にも変化が生じている可能性がある事を、あらかじめ御了承下さい。
 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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