■年金講座 コラム・年金いろいろ
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

コラム・年金いろいろ

国民年金

 国営の年金制度で、日本に住んでいる全ての人がこの制度に入っています。入る入らないの自由はなく、20歳になれば自動的に加入となるので「国民年金に入っていない」と言う人はこの国には一人もいません。
 20歳以上60歳未満の人が保険料を払い、65歳から死ぬまで老齢年金がもらえます。
 老齢年金以外にも、障害年金や遺族年金があります。
 いずれの年金も、未納が多いとビタ一文出なくなります。
 会社で厚生年金に入っている人は「国民年金の第2号被保険者」となり、給料から天引きされている厚生年金の保険料の中に国民年金の保険料が含まれています。第2号被保険者に扶養されている配偶者(男女問いません)は「第3号被保険者」となり、保険料は厚生年金制度全体から出してもらえるので、自分では何も払う必要はありません。
 第2号でも第3号でもない人は、全員「第1号被保険者」となり、自分で毎月保険料を払いに行かなければなりません。
 生活苦で保険料が払えない時は、市町村役場に申し出て、認められれば、保険料が免除されます。免除された人はお金を払っていない分だけ老齢年金が少なくなるものの、未納扱ではなくなるので、「未納が多いので年金が出ない」と言う事態を避ける事ができます。

厚生年金

 国営の年金制度で、法人の会社なら全て、個人経営な会社なら5人以上の所は、厚生年金に入らないといけない事になっています(が、2割程度の会社が未加入です)。
 厚生年金に加入している会社に入った人は、厚生年金に入る事になります。入る入らないの自由はありません。(だから「年金には入らないから」と言って社長を困らせないで下さい)
 70歳未満の人が保険料を払い(年令の下限はありません)、65歳から死ぬまで老齢年金がもらえます(現在は60歳からですが、引き上げ中です)。
 老齢年金以外にも、障害年金や遺族年金があります。
 国民年金での未納が多いと、厚生年金までもがもらえなくなります。
 正社員だけでなく、バイトやパートでも常勤であって週30時間以上働いていれば、厚生年金の加入者となります。
 保険料も年金額も給料に応じて決まります。
 保険料は会社と本人の割り勘になります。

共済年金

 かつての恩給制度が変化して出来た制度です。国や地方公務員が加入していて、サラリーマンが加入している厚生年金に代わる制度です。各組織・各地域・各職域などで共済組合を作って、そこで健康保険と年金を運営しています。
 年金としての仕組みは厚生年金とほとんど同じなのですが、厚生年金と同額の給付にプラスして「職域加算」と称した上乗せ給付があるので、年金としては結構いい金額が支給されています。
 しかし、この職域加算は、民間企業で言う所の年金払いな退職金としての役割を担っています。ですから、共済年金はどちらかと言うと厚生年金よりも厚生年金基金に似ているので、「公務員は年金が高くてけしからん」と目くじら立てるのは、筋違いです。
 公務員以外にも、私学の先生が共済組合を持っていて共済年金をやっています。未来を担う子供達を滅私奉公して教育するのに、公立も私立もないだろうと言う事で、準公僕としての扱いになっているのでしょう。
 公立も私立も学校の先生は共済年金なので、厚生年金は他人事になります。年金制度についての理解は一般人よりも低いかも知れません。それが、なかなか学生への年金教育が思う様に進まない原因にもなっています。

付加年金

 国民年金の上乗せ年金。第1号被保険者しか加入出来ません。国民年金保険料13,300円(月額)を払う時に400円余分に払うと、将来もらう年金(年額)が200円プラスされます。
 40年間で192,000円払うと、年金額(年額)が96,000円増える計算になります。たった2年で元が取れてしまう(81歳まで生きれば8倍のリターンになる)驚異の高利回りです。
 払いたいと思ったその時から始める事が出来、やめたいと思ったその時にやめる事が出来ます。
 市町村役場へ行って「付加年金払う人になりたい」と言えば、いつもの13,300円の納付書に代えて13,700円の納付書を送って来る様になります。
 国民年金の一部分として、国が運用し、国が支払ってくれます。
 国民年金保険料が450円や900円の時代なら、400円余分に払って200円余分にもらうと言うのはかなり意味があるものだったのですが、オプション扱い故に物価上昇が金額に反映される事なく30年を経過してしまい、現在では400円も200円もはした金になってしまいました。
 もしも今後、年々物価が上昇する時代に戻る様であれば、給付が何の足しにもならなくなるリスクが大きいのですが、もしあなたが今後物価はそう変わらないと思うのであれば、付加保険料の支払を検討する価値は充分にあると思います。
 第1号被保険者の2%ほどが付加年金を払っています。

国民年金基金

 国民年金の上乗せ年金。第1号被保険者しか加入出来ません。付加年金が事実上機能停止なのを受け、それに代わるものとして作られました。ですから、付加年金と国民年金基金の両方に同時に入る事は出来ません。
 各職業別に25、各県にひとつづつ47、合計72の「国民年金基金」と名のつく団体があり、自分の属すべきどれかひとつの基金に加入します。一旦加入するとやめる事が出来ず、どうしてもやめたければ、厚生年金のある会社に就職するか、厚生年金に入っている人と結婚するか、職業別基金であれば転職するか、県別基金であれば引っ越しをしなければなりません。
 各基金は国とは関係のない普通の団体です。ですから、中身はほとんど私的年金なのですが、公的年金として法律で特別扱いされているので、保険料は全額が社会保険控除になります。この点が生保にはない最大の特徴になります。
 加入時の予定利率が最後まで保証されます。今加入すれば1.75%の利回りになります。(平成14年3月までは4%、平成16年3月までは3%でした)
 最初のひと口目が終身年金で、ふた口目からは終身年金と有期年金とがあります。年金額から逆算して保険料を決めるので、加入時の年齢によって保険料は変わります。
 4%や3%の利回りを保証しているせいで、すでに財政はかなり悪く、この先どうなるかは誰にもわかりません。でも、まだ元本割れはしていないので、破綻のリスクは生保とそれほど差はないでしょう。(「破綻間近になったら、どうせ政府が援助するだろう」と言う噂もありますが、真偽の方はわかりません)
 保険料の上限額・年80万円を払うとかなりの節税効果が期待出来るので、税率が高くて仕方ない人なら加入を検討する価値は充分にあるでしょう。
 第1号被保険者の6%が国民年金基金に加入しています。

厚生年金基金

 厚生年金の上乗せ年金。第2号被保険者の一部が加入しています。
 かつては、厚生年金の半額を負担している企業には「このお金を国に任せるよりも、自分達で運用した方がよっぽどいい給付が出来るのに」と言う気持ちが強かったのです。そこで、その願いをかなえてあげようと言う事で、企業に自分の社員の厚生年金の運用を任せる制度が作られました。それが厚生年金基金です。
 厚生年金基金は、大きな企業なら企業単独で設立しています。グループ企業が集まって設立している所や、業界団体で設立している所もあります。基金を持っている会社に勤めている人は、自動的に基金の加入者となり、入らない自由や抜ける自由はありません。逆に、基金に入りたいからと言っても、基金を持っている会社に入らない限りは加入する方法はありません。「厚生年金よりもよい給付をする事」が設立の条件になっているので、どこの基金も厚生年金よりもほんのわずかだけ給付をよくしています。それプラス、どこの基金でも基金独自の退職金積立をドンと上乗せした形になっている様です。
 厚生年金での予定利率を上回った運用が出来た時は、企業はそれだけ社員の福利厚生を厚くできますが、もし厚生年金の予定利率を下回ってしまった場合は、その分を企業が穴埋めしなければなりません。
 厚生年金は物価上昇や給与水準の上昇に合わせて給付がよくなって来ていますが、そう言う社会情勢の変化は基金の責任ではないので、そう言う理由で増えてしまった部分は厚生年金側で面倒を見てくれます。ですから、基金のある会社の社員は、基金の掛け金に加えて、かなり安めの(給付が増加した分だけの)厚生年金の保険料を天引きされます。
 日本がバブル絶頂期の頃は、予定利率をはるかに越える運用が出来、基金のある企業はウハウハだったのですが、それらのお金は社員の福利厚生のため、ほとんどがリゾート施設になってしまいました。その時に余剰金を取っておけばよかったのですが、そう思っても後の祭りで、現在は運用しても増えるどころか減ってしまう状態になって、基金が企業のものすごいお荷物になってしまっています。そのために「代行返上」(積立金を国に渡して、厚生年金の肩代わりをやめる事)が流行する様になりました。

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 このページは2004年7月〜2005年2月に配信したメルマガを再構成したものです。時間の経過とともに、文中の数字にはズレが生じており、また、制度や世情にも変化が生じている可能性がある事を、あらかじめ御了承下さい。
 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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