■年金講座 充分な年金
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

番外編 5

充分な年金

「40代のパラサイトシングルが増えている」
 そんな事を、先輩社会保険労務士に言われた事があります。
 確かに言われてみれば、その様な人達も、ひと昔前なら珍しい存在だったのですが、今ではそんなに珍しくなくなって来ています。

 パラサイトシングルは、ニートと違って、それなりに働いているので社会的にはそんなに深刻な問題ではないと思います。しかし、おひとり様と違って、親と同居している分だけ所得は低いままでもよく、何となく暮らして行けてしまいます。独立して家を出て行くと言う事もなく、結婚する事もなく、ふと気がついたら40歳になっていてもおかしくないでしょう。

 子が40歳にもなると、普通は親は現役を引退しており、年金生活に入っています。
 ひと昔前なら、そんな状態で親子で暮らして行くのは困難でした。年金なんてものはないか、あっても微々たるものなので、子供ががむしゃらに働いて親を養って行かなければならないのが普通でした。
 しかし今では、年金制度も成熟期を迎え、厚生年金に入り続けていた人達なら、年金額は年200万円位になります。夫婦共に厚生年金だった家庭なら、年金で贅沢が出来てしまいます。
 そんな状態なので、家庭のもろもろの支出なら、年金で何とかなってしまう…子供ひとりが居候しても、家計が破綻する事がないので、何となくやって行けてしまうのです。

 年金額がある程度の水準になったからこそ、40代のパラサイトシングルが増えたのではないか、と言う事の様です。

 この現象が悪い事なのか別に構わない事なのかは、私にはよくわかりません。もしかしたらこれが、時代が産んだ新しい家族の形のひとつなのかも知れません。
 でも、年金で暮らして行ける親を持つ子よりも、年金では足りずに援助が必要な親の子の方が、自立に対しての自覚が得やすいのではないかと言う感じがします。(それに、将来「60歳のパラサイトシングルが…」なんて時代が来たらどうしよう、と言う心配もある)

「親は子が面倒見るべきだ」とされた時代は過去のものとなり、「親は自分の年金で老後を過して子供には頼らない」と言う時代になりつつあります。
 これこそが年金制度が目指して来た社会の形なのですが、ひいてはそれが「自分は親の面倒を見なくてもいいんだ」と言う気持ちが、パラサイトシングルを産む原因になるばかりか、ニートやフリーターを産む遠因になっている様な気がしてなりません。
 パラサイトシングルやおひとり様は、自由になるお金が多いので、その分消費をたくさんしてくれて、「消費は美徳」としている資本主義社会にとっては都合のいい存在です。フリーターも、安くて使い捨てに出来る人材として、企業にとって都合のいい存在です。ニートは…今の所は誰も迷惑を受けていないから、増えてしまっているのでしょうか?
 本当に、社会が変化した結果として、この様な多様な生き方が受け入れられて来たのならいいのですが、単なる企業の都合でこうなっちゃったのだとしたら、国力衰退の原因として、将来悔いる事になるかも知れません。

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