年金の支給額は、物価や給料の相場の変化に応じて、自動的に変化する様になっています。
今まで、年金額は決して減る事はないと言われ続けていたのですが、平成15年に、ついに減額改定がなされました。ここの所しばらく日本はマイナス成長だった上に物価も下がり続けだったのを、政府の意図的な操作によって減額せずに年金額を据置にしていたのですが、ついにそれも出来なくなってしまったのでした。
当然ですが、設計から外れた事をした分だけ、年金の財政はダメージを受けました。
なら、なぜ政府は、ダメージ覚悟で年金額を下げまいと頑張ってしまったのでしょうか?
それは、年金受給者達が、年金額が減るのを大変恐怖に思っているからなのだそうです。
普通、年金をもらっている人達は、年金以外に収入のアテがありません。歳を取って来ると体が思う様に動かなくなると言うのもありますし、ずっとサラリーマンで過ごして来た人達ともなると、自分で仕事を作り出して稼ぐ術を知りません。
子供にたかる事が出来る人はいいのですが、そうは行かない人となると、国からの年金を受け取りつつ、月々目減りして行く預金通帳を眺めているしかありません。
唯一の収入が年金と言う事になるので、その年金額が減る事には底知れない恐怖感を感じるらしいのです。たとえ、1円の減額でも、ものすごい恐怖なのだそうです。
だから、そんな老人達に、物価が下がったのに応じて年金が減っただけだよと、実質的価値は減っていないんだよと、いくら説明しても、納得してもらえません。
65歳になると、それまで全額が厚生年金から出ていた年金の半分が国民年金に裁定替えになるのですが、その時にもらう書類を見て「こんなに減ってしまった」と大騒ぎする老人が大変に多いです。実際にはこの時に年金が減る事はありません。これまで厚生年金だけで支給していたものが、同じ額のまま、厚生年金と国民年金の2制度からお金が出る様になるだけです。しかし、厚生年金単体の数字を見ると、ザックリ減っている様に見えるので、かねてから年金額が減る事に恐怖を覚えていた人達が、みんなそろって勘違いをしてしまうのです。
この恐怖感、私達若い衆には理解をしようにもなかなか理解出来ないものです。私達は、どこかに働きに出さえすれば、取りあえずお金を手にする事が出来るので、老人達の恐怖感を想像するのは難しいのです。
でも、いつか私達も、必ずその老人達の仲間入りをする日が来ます。その時になって(恐怖を実感する余裕すらなく)途方に暮れてしまう事のない様、体が元気なうちからきちんと備えをしておいて下さい。
このページは2004年7月〜2005年2月に配信したメルマガを再構成したものです。時間の経過とともに、文中の数字にはズレが生じており、また、制度や世情にも変化が生じている可能性がある事を、あらかじめ御了承下さい。
扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。