■年金講座 年金が怖い
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

番外編 1

年金が怖い

 私共社会保険労務士は、年に数回程度、行政のお手伝いで色々な会社を回ったりします。書類が未提出になっている所を回って提出のお願いに行ったり、労働保険や社会保険に未加入の所を回って制度の趣旨を説明したりします。私は、そんな会社を回っていて、ふと、ある事に気がつきました。
 厚生年金に一度でも入った事のある人は60歳になったら老齢年金の裁定請求をしなければなりません。(将来的にはこの年齢は65歳に上がるはずですが、現時点では60歳です)所が、60歳を過ぎているにもかかわらず、裁定請求をしていない人が意外なほど多いのです。

 よくよく話を聞くと「どうせ全額停止になるに決まってるから、裁定しなくても同じだよ」との事ですが、(厚生年金の保険料を払いながら厚生年金をもらうのは、理屈に合わないので、給料と年金額に応じて、年金の支給が減額されます。給料が多い人は全部止まっちゃう事も)でも、65歳の国民年金の裁定請求の時に、ついでに厚生年金の裁定請求をしようと思っても、60歳当時の事を証明する書類を揃えるのは大変に難しいのです。そう言う人に出会ったら、取るものも取りあえず「全額停止でも何でもいいから、1日でも早く社会保険事務所に行って年金相談をして来なさい」と説得しています。
 社会保険事務所の年金相談が毎日々々満員御礼で、とても待ち時間が長いと言う事と、平日昼間しか開いていないのとが相まって、それで裁定請求から足が遠のいてしまっているのも、また事実の様です。
 そんな事がもろもろ重なって、裁定請求しないでほったらかしになっている人が多いのかなと思っていたのですが…

 先日、年金の勉強会で、こんな事を聞きました。
> 50歳代後半、60歳が近くなるにつれ、「年金」と言う言葉が怖くなる
 新聞で「年金」と言う活字を目にしてしまうと、テレビから「ねんきん」と言う声が聞こえて来ると、逃げ出したくなるそうです。
 なるほど、そんなんでは、裁定請求しに社会保険事務所へ行くはずがありません。

 一体自分がいくらもらえるのか、それを知るのが怖くて怖くて仕方がなく、それが「年金」と言う言葉に対する恐怖心に変わって行くのです。
 年金の額がわからないと、老後の生活設計など全然出来ないのですが「もしも、とても少なかったらどうしよう」と言う怖い考えが先に立ってしまって、自分の年金額を確かめるのを先延ばし先延ばしにしてしまうのです。

 社会保険庁の記録を確かめてもらわないと年金額がわからないと言う現制度にも問題はあると思います。
 しかし、まっとうに働いて来て、コツコツと厚生年金を天引きされて来た人達は、とんでもない低額にはなりません。国民年金の方がメインだった人でも、未納がほとんどなければ、年金額は大体予想がつきます。
 怖くなってしまう人には、まっとうに払って来なかった人達が多い様です。(そりゃ、とっても怖いだろうて)

 このメルマガの読者の皆さんは、歳を取ってから「年金が原因の胃痛持ち」にならない様に、今のうちから気をつけていて下さいませ。

 ちなみに、平日昼間オンリーで批判の多かった社会保険事務所ですが、現在は時々ですが試験的に夜間営業とか休日営業とかを行って、開庁時間がどうあるべきかを探っている所です。(宣伝が下手なのか、時間外営業では相談者もなく閑古鳥が飛んでいるみたい)
 また「もらう歳になるまで年金額がわからないのは問題だ」と言う批判に対しては、平成16年からは58歳になった人には郵送で通知を送る様にし、55歳以上の人なら聞きに行けば教えてもらえる様になりました。平成20年には国民全員に通知が出来る様に、現在準備中だそうです。

免責

 このページは2004年7月〜2005年2月に配信したメルマガを再構成したものです。時間の経過とともに、文中の数字にはズレが生じており、また、制度や世情にも変化が生じている可能性がある事を、あらかじめ御了承下さい。
 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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