■年金講座 マスコミの報道
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年金は本当に破綻するの?〜若者のための年金講座

第10章 マスコミの報道

情報を受け取る能力

 ご存知ない方はまずいないと思いますが、民放では視聴率に応じて広告主からの収入が変化する様になっています。
 ですから民放は、視聴者の皆が関心のある話題を取り上げて、視聴者が気に入る様に演出をし、視聴率を上げようと努力をしています。

 この視聴率システムには、国民の関心事や民意を反映した番組が作られ、世論を盛り上げて行くと言う副作用的な効果があります。番組に取り上げられて関心が集まり、さらに番組に取り上げられる機会が増え、世論はどんどん濃縮されて行きます。
 しかし、それらの番組が事実を伝えているのかと言うと、必ずしもそうとは限りません。見識は伝えているのですが、その見識が事実とどう関係あるのかは、あくまでも私達受け手が判断しなければなりません。

 たとえ生放送であったとしても、ワイドショー番組やニュース番組でも、テレビには台本があります。ゲストによくコメントを求めてしゃべってもらっていますが、その内容も実は台本に書かれているのです。
 生放送なので、台本にはない事をしゃべろうと思えば出来ない事もないのですが、そんな事をすると仕返しに業界から干されてしまうため、台本に逆らってしゃべると言う事はまずないらしいです。
 テレビの画面でしゃべっているその人の言葉が、本当にその人の真意なのか、本人に直接訊いてみない事にはわからないのです。

 識者と呼ばれる人も、自分の持論が時流に乗っているこの瞬間に、できるだけたくさん稼いでおかなければならないので、ある事ない事いろいろしゃべって、次もテレビに呼んでもらえる様に努力しています。

 どちらも、より視聴者に食いついて見てもらうための、局側の演出によるものです。演出によって、私達が望む物を見せてもらえるのですが、演出が入り込んだ分だけ事実とずれが出る余地も生まれます。

 雑誌などでも、部数で広告収入が決まるので、事情は民放と同じです。

 今の日本の年金は賦課方式(今年必要な金は、今年取り立てる)ですが、積立金もたくさんあります。実は、積立方式と賦課方式とをごちゃ混ぜにすると、どうにでも話を作れると言うトリックがあります。
「積立金が足りないから年金が危ないんだ」と言えば、それは間違った事は言っていませんが、事実ではありません。この手法をふんだんに使って、マスコミは「年金が危ない」と、ことさらあおり立てて来ました。
 逆に政府も、この手法を使って「年金は大丈夫なんだ」と言っていますが、これも嘘は言っていないものの事実とは言い難いです。かく言う私もこのメルマガで、この手法をふんだんに使って演出して来ました。

 また「勘違い未納」も、国民の間でも多くの人がやらかしている事なので、それをネタに議員を責めたって仕方ないのに、数字稼ぎにはちょうどいいネタだったので、マスコミは盛んに取り上げました。
 あげくのはてに「任意加入に未加入だった」なんて話まで糾弾される一方で、「故意の未納」な議員はほとんど取り上げられていなかったりもします。

 議員年金も視聴率を稼ぐにはちょうどいいネタだった様です。議員年金は私的年金なので、この制度がどうなろうと、公的年金には全く影響がありません。しかし議員年金が、さも年金問題であるかの様に、盛んに取り上げられていました。
 もし議員年金を廃止するなら、皆さんの会社の退職金も廃止しないと不公平なのに、話がそう言う方向に向かう気配は全くありません。

 そんなこんなで、昨今の一連の年金報道は、本筋とは関係のない話題であふれています。
 これらの横筋なネタは、国会でも盛んに取り上げられています。議員や政党がこのテの事を声高に叫んでいるかどうかで、年金について真剣に考えているのか、人気取りに腐心しているのかが、見分ける事ができそうです。

 一方、視聴率が直接経営には影響しないNHKや、常に手堅い視聴率を得ている主婦向な情報番組などでは、比較的まともに年金を取り上げている様です。
 現在の制度の内容をていねいに紹介する番組もあれば、「月2〜3万円な年金でも悠々自適に暮らす」ための新しいライフスタイルを提案する番組があり、「放送大学(入学金2万円+1教科1年1万円)に入って学生免除を受ける」と言う超裏技を紹介する番組もありました。

 また、報道番組やワイドショーなどでゴシップ的に取り上げられる話題が全部が全部ダメなのかと言うと、一概にそうとも言えません。
 現に、保険料の官舎への使い込みなどは、専門家の間でも誰も知らなかった事でした。
 ですから、マスコミと全く付き合わないと言うのもナンセンスであって、要は、私達受け手の「見分ける目」が重要なのだ、と言う事になるかと思います。

免責

 このページは2004年7月〜2005年2月に配信したメルマガを再構成したものです。時間の経過とともに、文中の数字にはズレが生じており、また、制度や世情にも変化が生じている可能性がある事を、あらかじめ御了承下さい。
 扱うテーマが「年金」と言う制度と法律に関するものではあるのですが、概念的な部分を取り上げるため、どうしても厳密さや正確さに欠ける傾向にあります。ですから、何かの判断の参考にする場合や手続きを行う時は、必ず別の情報源でも確かめて下さい。このページの記事により損害が発生しても、補償は一切いたしませんので、あらかじめご了承ください。



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