2003-09-14

小鳥を保護する前に
知っておかなければならない事

 ちまきも、これらの事は知りませんでした。ですから、ものすごく大変な思いをしてしまいました。できれば、保護する前に読んでおいて欲しいのです。でも、検索してここに飛んで来た人達は、大半が保護してしまった後なのでしょうね。

なぜ野生動物は多産なのか?

 たとえばツバメの子は、1回に5羽程度産まれます。そして、1シーズンに2回巣立って行きます。つまり1シーズンに10羽のヒナが巣立って行くのです。その中で翌年また帰って来るのは2割程度、つまり2羽だけが生き残る勘定になります。
 野生動物は、無事に大人になるのが難しいのです。
 我々人間でも、昔はよく子供が死んだので、子供はたくさん産まれていました。いつしか人が死ぬ事自体が珍しくなってしまい、子供も2人も産めば充分になったので忘れがちなのですが、元来、産まれて来た子が大人になるのは、難しい事だったのです。

 そんな中で出会うのが、生きる資格を失った小鳥のヒナ達なのです。もちろん私たち人間が手助けすれば、助かるでしょう。でも、それは自然の営みから外れた行為なのです。
 生きる資格を失ってしまったヒナ達でも、他の生き物の食料になると言う、大変重要な使命を持っているのです。それを人間が横から手を出して助けてしまうのだと言う事を、小鳥を保護しようと思ったその時に、思い出す様にして下さい。

 自分の行く末について案ずるのは、たくさんの動物の中でも人間だけです。人間以外の動物は、将来を考える事はなく、今のこの時を懸命に生きています。ですから「この子はせっかく産まれて来たのに、生き延びる事ができないなんて、可哀そう」と思うのは、人間の勝手な思い込みに他ならないのです。

巣立ちヒナを保護しないで

 地面に小鳥のヒナがうずくまっている場合、大変だと思うあまりつい保護してしまいがちなのですが、ちょっと待って下さい。そのヒナの親鳥は近くにいるのかも知れません。

 ヒナは、巣立ちの直後から流ちょうに飛べると言うわけではなく、親鳥の保護のもと、飛び方とエサの取り方を学ぶ仮免の期間を経てから、ようやく独り立ちします。その仮免なヒナである「巣立ちヒナ」が保護されてしまうケースが非常に多いのです。
 人間が保護のつもりだったとしても、それが実は親鳥から引き離す「ら致・誘拐」になってしまうのです。独り立ちのための勉強の期会を奪ってしまい、生き延びるチャンスを少なくしてしまうと言う事を忘れないで下さい。

 車道にうずくまっている、とか、犬や猫が心配、とか、溝にはまってしまっている、とか、明らかに危険な場合は、塀の上や木の枝などに移してあげましょう。保護する必要は特にはありません。

巣から落ちてしまったヒナ

 巣から落ちてしまったヒナは、そのまま巣に戻してあげて下さい。よく「人間のにおいがついてしまったヒナは、親鳥が育児を放棄する」と言われますが、これは単なる俗説です。鳥は鼻がとても鈍感で、人間のにおいをかぎわける能力は、ほとんどないらしいです。
 一度戻してあげたのに、再び同じヒナが落とされた場合、そのヒナ自身に問題がある可能性があります。寄生虫がついている、とか、病気にかかっている、とかで、他のヒナを守るべく巣から退場となってしまう場合があるのです。そう言うヒナは巣に戻さないで下さい。

保護してもいいケースとは?

 自然の中に暮らしている野生の鳥達なのですから、自然に任せるのが一番いいのです。もし、それでも保護すべきケースがあるのだとすると、それはそのヒナが落ちたりケガしたりの原因が人為的なものだった場合になるでしょうか? 人間がいる事によって自然の状態から外れてしまった場合…巣を壊された、とか、自動車にぶつかってしまった、とかの場合です。

保護する場合は、覚悟が必要です

 でも、「人間による事故以外の場合は、心を鬼にして放っておきなさい」と言われても、なかなかそうは行かないのが人情ってもんです。つぶらな瞳で必死に訴えかけられたら、やはり放ってはおけません。
 どうしても助けたい、と思うのなら、覚悟をして下さい。小鳥のヒナは、すなわち赤ちゃんなんです。つきっきりで面倒を見なければなりません。一応は鳥なので、ほ乳類と違って夜は寝てくれるのですが、それ以外は十数分おきにエサをねだって来ます。温度管理も大変です。そんな状態を数週間維持できそうにないなら、保護する事はできません。
 保護してしまえば、その後がものすごく大変なんだと言う事を、保護する時に思い出す様にして下さい。

野生動物の飼育は法律で禁じられています

 野生動物はむやみにつかまえてはならないと言う観点から、日本では野生動物を飼育する事は法律で禁止されています。
 飼育とは継続して飼う事を言い、一時的に保護する分には、この法律による縛りはありません。では、その「一時的」とはどの位の期間なのかと言うと、それは1か月を越えるかどうかが目安になる様です。
 1か月以上、その動物とかかわらなければならない場合は、行政に「やむを得ない事情があるから」と言う事で許可を得る必要があります。
 可愛いから、とか、うちに居着いちゃったから、とか言う理由で、保護した小鳥を飼う事はできないのです。


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