2004-06-04

ツバメを保護をしてしまったら

 おそらくこの手のサイトを見に来ている人の多くは、ツバメを保護してしまったはいいがどうしたらいいかがわからない人達かと思います。かく言う私も懸命に調べました。
 保護してしまった場合、知っておかなければならない事をこのページにまとめておきます。決定的な間違いやとんちんかんな事が書いていない様には気をつかったつもりですが、私自身が鳥の事には詳しくないため、ここに書いてある事を100%鵜呑みはしないで下さい。
 このページや、他のたくさんのサイトを参考にして、できれば専門家にも聞いて、対処して行って下さい。あなたの手に、小さな命の運命がかかっているので、くれぐれも慎重にお願いします。

 このページは鳥全般のヒナに関して通じる事と、ツバメのヒナだけに通用する事とが混ざっています(が、特に記述上は区別していません)。スズメなどの他のヒナについて調べている人は、その事を充分意識した上でこのページをご覧下さい。(勘違いのモトになるので、できればこのページを参考にはせずに、その鳥の専門なサイトで調べていただければと思います)

病気や怪我の場合

 病気で体調が優れない時や、怪我をしている場合は、私たち素人ではできる事や知識に限界があるので、専門家の力を借りる事になります。
 しかし、動物病院などで診てもらうにも、鳥について経験のある医者はそう多くはありません。多くの病院は一般的な手当てしかできない様です。
 そうは言っても、獣医同士で地域で横のつながりがありますから「鳥に詳しい人を紹介して下さい」と聞いてみるのがよいでしょう。

 野生動物は野生のままにしておくのが基本なので、それを保護してしまったと言うだけで「余計な事をしてしまった」事になります。ですから、どこに問い合わせても最初にお小言のひとつかふたつは必ず言われるので、その点は覚悟しておきます。
 病院によって対応が違いますが、多くの病院では野生動物に対する処置は病院のボランティアと言う事で無料で診てくれる様です。ただし、あくまでも好意によるボランティアであって、それがルールになっているわけではないので、しっかりお金を取る所もありますし、無料と言っても処置した時の材料費などを請求される場合もあるので「お金を取られた」からと言って怒らないで下さい。全部自分が自腹を切るつもりで医者に行って「お金はいいです」と言われたら感謝する、と言った感じに思っていれば、ちょうどいいと思います。

 野生動物を保護した場合でも、飼うつもりがあるのなら、治療費は無料にはしてもらえません。
 野生動物を飼うのは違法だと言う事はとりあえず置いておいて、「この鳥は放鳥を目指すのか、それとも放鳥はあきらめるのか」と言う事を医者は必ず聞いて来ますので、とりあえず自分の思っている事を返事して下さい。

1にも2にも温度管理

 幼鳥を保護したとしてもすぐに死なせてしまう一番多い原因は、温度管理の失敗だそうです。「1にも2にも温度管理」この言葉を頭にたたき込んで下さい。

最低でも30℃必要

 鳥は、平熱が40℃〜42℃ほどある生き物です。空を飛ぶために大量のエネルギーを必要としているため、大変燃費の悪い体をしています。元々の体温がとても高いので、人間の手(36℃)で包んであげるだけでも凍えてしまいます。
 人間の赤ん坊でも、犬や猫の動物でも、どの生きものにも通用する事ですが、生まれたばかりの赤ん坊は自分で自分の体の調節をする能力がありません。ちょっとした油断で、すぐに凍えてしまい、そのまま死んでしまう事になります。
 小鳥のヒナ場合は、平熱が高い分だけ、高い温度を維持してあげなければなりません。最低でも30℃は必要です。生後何日か、体調はどうか、鳥の種類によっても最適な温度は変わって来る様ですが(どの位が適温なのかは、他のサイトで見て下さい。詳しく解説しているサイトもある様です)、ヒナの周囲の温度が32℃〜36℃程度になる様にして下さい。
 野生の場合は、狭い場所にヒナ同士が寄り添って集まる事によって、互いの体を暖めあって、凍えてしまう事を防いでいます。

 鳥は、凍えると羽毛を立ててふくらみます。「ふくらんだ状態がなくなるまで温度を上げてやる」と言うのを目安にして下さい。

暖め過ぎに注意

 暖めなければならないとは言っても、暖めすぎると熱射病になって死んでしまう事になります。この事故によって亡くなるヒナも多いそうです。
 平熱が人間とはあまりにも違うため、適温が人間ではわかりません。ですから、適温をヒナ自身が選べる様に工夫する必要があります。
 具体的には、暖める場所と涼しい場所を作ってあげて、ヒナが暑いと感じたら逃げられる様にしてあげます。「半面暖房」と言う手法です。くれぐれも、ヒナのいる場所全面を暖房してしまって、熱死させない様にして下さい。

 温度計がなければ、温度計を買って来て下さい。そして、常時温度を監視して下さい。
 新しい暖房器具を試す時は、こまめに温度やヒナの状態をチェックして、その暖房器具が大丈夫な事がはっきりするまで油断しないで下さい。

 自力で暑い場所から逃げる能力のないヒナの場合も、こまめに温度やヒナの状態をチェックしてやる必要があります。

使用する暖房器具

 ほどよく暖まり、しかも飼育場所全体を暖めてしまわないと言う点では、市販のひよこ電球やハムスター用の電気あんかなどが良いと思います。
 私は人間用の電気座布団を使用しましたが、これも20〜30ワット程度の電力ゆえ使う事ができたのであって、人間用の電気あんかの様な電力の高い(熱くなる)機器を使用する場合は、充分注意が必要です。
 ストーブなどは、出て来る温風が結構温度が高いので、使ってはいけません。
 熱量としてはカイロなどもちょうどいいのですが、カイロは空気中の酸素を使って熱が出るので、ヒナが酸欠死してしまう可能性もあります。使うのであれば、かなりの注意が必要です。

 いずれの場合も、きちんと室温が維持できるか、半面暖房になっているか、ヒナが触れる場所が高温にならないか、などに注意を払います。

食事について

鳥は大食漢

 鳥類は空を飛ぶために、大変燃費の悪い体(代謝の非常に活発な体)をしています。その食べる量と来たら半端じゃありません。
 また、ちょっとした絶食でも、すぐに肝臓をダメにしてしまい、1日も食べなければ死に至ります。
 ですから、鳥には欲しがるだけ、とにかく大量に餌を与え続けなければなりません。

あなたが親鳥の代わりです

 ヒナを育てている親鳥の様子を思い起こして下さい。朝から晩まで休む事なくエサを運び続けています。その間隔は数分おき位でしょうか?
 人の手でヒナを育てると言う事は、その親鳥の代わりをあなたがやってあげると言う事です。15分おき位にエサを与え続けなければなりません。
 これは、もちろん外出なんかしている余裕など全くない様な、大変な作業です。

ツバメは肉食

 ツバメは昆虫を主食としています。しかも生き餌でないといけません。この点がツバメのヒナを育てるのを非常に難しくしています。
 バッタや蛾など、大人のツバメが食べているものを子供の頃から食べ慣れて行かなければなりません。ですから、ヒナのうちから、これらの「空を飛ぶ」昆虫を毎日大量に集めて来て、与えなければならない事になります。

すり餌

 まだ生き餌を食べる事ができない生まれたての子の場合は、すり餌を与える事になります。
 市販のすり餌は、穀物と肉質のブレンド具合から何種類かありますが、その中で肉質の割合が一番高いもの(「7分」とか「ウグイス用」とか書かれたもの)を与えます。
 ただし、昆虫が主食のツバメに魚が主成分のすり餌を与えるのですから、すり餌だけで充分かと言うと、そうとも言い切れない様です。(この辺の事は、私にはよくわかりません)

ペットフード

 すり餌を買って来るまでの非常手段として、ドックフードやキャットフードを粉末にしてすり餌の代わりにすると言う方法があります。
 肉食のツバメにとっては、たんぱく質の割合が多ければ多いほどよいと言う理屈になります。しかし、しょせんはほ乳類にとってベストな栄養素になる様に調整された食品なので、鳥にとってはあくまでも緊急用でしかありません。
 ペットフードの中では子犬用のドッグフードが最良と言われていますが、わざわざ買ってくるのであれば、鳥用のすり餌を買って来ましょう。

ミルワーム

 市販されている生き餌に「ミルワーム」と言うものがあります。甲虫のイモ虫で、200匹200円位で売っています。
 ヒナののどを食い破らない様に頭をつぶしてから、ピンセット等を使ってヒナの口の中へ入れてやります。
 野原に昆虫を捕りに行かなくていいので、楽なのですが、ミルワームだけでは栄養失調になってしまいます。
 ミルワームは油ぎっていてカロリーは高いのですが、半面、栄養価がとても低いのです。
 また「カリウム:リン比」が異常にかたよっているので、それも栄養失調の原因となる様です。

 売っているミルワームは、小麦のふすま(ヌカ)で育っています。これを他のものに変えれば、少しは栄養がマシになるかも知れません。(ちなみに、容器の上の方にたまっている茶色い皮みたいなのがミルワームの脱皮の皮で、白い破片みたいのがエサで、下半分の茶白い細かい粉がミルワームのうんちです)
 犬や猫のペットフードを粉にしてミルワームに与えれば、ペットフードの栄養をヒナに与える事ができます。(ペットフードでミルワームが栄養豊かになるわけではなく、ミルワームのおなかの中の未消化のペットフードが栄養になる様です)
 また、脱皮直後の白いやわらかいミルワームがいれば、そちらの方が消化にいいので、見つけ次第そちらの方を与えましょう。

昆虫

 ミルワームでは栄養失調になるので、出来るならば極力、自然な食事をさせてあげるべきです。(この辺の事も、私はよくわかりません。他のサイトを参考にして下さい)
 昆虫のいっぱい飛んでいる場所へ行って、手当たり次第に飛翔昆虫を採集します。
 固い部分はやはり消化が悪いので、バッタの足とか羽根とかを取り除いてあげるとよい、と聞いた事があります。

ビタミン剤

 食欲が優れない、とか、元気がない場合にはビタミン剤を使います。鳥用のビタミン剤が売っています。
 栄養の偏りが気になる場合にも、使った方がよいでしょう。
 人間の場合、ビタミン剤の使い過ぎや使い続けは、体調を逆に変な風にしてしまう事がありますが、私が思うに、鳥でもこれは同じだと思います。大量に与えるのはかえって危険かも知れません。

放鳥について

エサ捕りの訓練

 ツバメは空中を飛んでいる昆虫を主食にしているので、そんな昆虫をつかまえられる様に訓練する必要があります。(この辺の事も、私はよくわかりません。他のサイトを参考にして下さい)
 普段、口の中に入れてやっているエサを、左右に振ってみてくわえさせる所から始め、ちょっとだけほうり投げてみたり、飛び回っている時に空中キャッチさせてみたりしているうちに、飛んでいる昆虫をつかまえられる様になるみたいです。

放鳥のタイミング

 エサ捕りに不安がなくなってから放鳥、でよいと思いますが、ツバメは渡り鳥なので、日本にいられる期間には限りがあります。エサ捕りの訓練の事ばかりを気にしていると、南の国へ帰れなくなってしまいます。(飼うにしても、冬を越させるのはとても大変で難しい様です)ですから、訓練には、必ずどこかで見切りをつけなければなりません。
 地域によって違いますが(この点については、他のサイトで調べて下さい)うちの近所(名古屋)では9月の初旬にはツバメが小集団を作り始めます。小集団同士が集まって大きな集団となって行き、ひたすら食べまくってコロコロに太って渡りの準備をして、10月には旅立って行くそうです。